Actin-Chromobody®:アクチン動態の可視化—アクチン本来の挙動に影響を与えない蛍光ナノプローブ

Actin-Chromobody®はアクチンフィラメントの挙動に干渉しない最適な蛍光プローブです。


ターゲットタンパク質の機能に影響を与えない検出用プローブは、多くの研究者に求められています。例えば、アクチンやアクチンに関連する機能を評価するために、これまでに数多くのアクチン可視化プローブや可視化手法が開発され、研究者は任意の技法を選択できるようになりました。アクチン関連の研究を実施する際は、アクチンの動態/挙動を変化させない最適なアクチンプローブを適用する必要があります。本稿では、どのようにアクチンプローブがアクチンを可視化するのか、どのようなプローブが機能に干渉し、あるいはどのようなプローブが機能に干渉しないのかについて解説します。

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ドイツの生化学薬理学センター(BPC:Biochemical-Pharmacological Center)薬理研究所(Marburg大学)のRobert Grosse教授とその研究チームは、潜在的な「実験の落とし穴」を避けるために、アクチンフィラメントの検出技術を体系的に検討しました。2017年に発表したレビュー「Actin visualization at a glanceMelak et al. 2017)」で著者らは、一般的に用いられるアクチンフィラメント可視化プローブである、ファロイジン(Phalloidin)、Lifeact(ライフアクト、ペプチドプローブ)、ユートロフィン(Utrophin)、F-tractin(ペプチドプローブ)、SiR-actin(シリコンローダミン(SiR)融合アクチン)、GFP-actin(緑色蛍光タンパク質(GFP)融合アクチン)、タグ融合アクチン、そして「Actin-Chromobody®(アクチンクロモボディ®)」の各プローブのメリットとデメリットについて解説しています(表1、図1)。レビューでは、調査したプローブのうち、高レベルで発現させた場合でもActin-Chromobody®はアクチンの挙動への影響が非常に軽微なプローブであると考察しています。その他のプローブは、アクチン本来の挙動に対する影響が懸念されました。また、エピトープタグやタンパク質タグを融合して発現されるアクチンの場合、融合されるタグの種類によっては生細胞イメージングに不利であったり、アクチンの特性に影響する可能性がある等の不都合な欠点が存在することが述べられています。以上のように、アクチンの特性やアクチン骨格の重合/脱重合に干渉するアクチンプローブを用いる場合は、十分に注意して実験を実施する必要があります。

 

表1:最新のアクチン可視化技術/可視化プローブの概要

表:Melak et al(2017)より引用。

Melak et al(2017)より引用・編集。製品名には各社の商標または登録商標が含まれている場合があります。

 

図1:アクチン可視化技術/可視化プローブによるアクチン結合様式/可視化部位の概略図(Melak et al. 2017)

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Chromobody®(クロモボディ)は、内在性タンパク質のリアルタイム/生細胞イメージングを可能にする蛍光タンパク質融合ナノプローブです。細胞骨格マーカー等の各種マーカータンパク質に特異的な単一ドメイン抗体(VHH抗体、別名:Nanobody®)と蛍光タンパク質で構成されます。VHH抗体には、遺伝子工学的手法によりGFP(緑色蛍光タンパク質)またはRFP(赤色蛍光タンパク質)が融合しており、生細胞における内在性ターゲットのリアルタイム解析に用いることができます。Actin-Chromobody®のVHH抗体(別名:Nanobody®)は、そのエピトープであるアクチンへの結合速度定数および解離速度定数、両者の比であるon-off rateの均衡を配慮して開発された製品で、アクチンの挙動への干渉を防ぎます。そのためActin-Chromobody®は、内在性アクチンタンパク質をin vivo解析する際の生細胞イメージングに最適なツールです。

Chromobody® plasmidのトランスフェクションによる融合タンパク質の発現を示したイラスト

 

プロテインテックは、2種類のアクチンをターゲットとするActin-Chromobody®を提供しています。

細胞質のアクチンフィラメントを可視化するActin-Chromobody®は、TagGFP2を融合したActin-Chromobody® plasmid(TagGFP2)、およびTagRFPを融合したActin-Chromobody® plasmid(TagRFP)の2種類を提供しています。核内アクチンフィラメントを可視化するActin-Chromobody®は、Nuclear Actin-Chromobody® plasmid(TagGFP)を提供しています。

 

参考文献

M Melak, M Plessner, R Grosse. Actin visualization at a glance. J Cell Sci. 2017 May 1;130(9):1688. (Correction)

J G Danzl, S C Sidenstein, C Gregor, N T Urban, P Ilgen, S Jakobs & S W Hell. Coordinate-targeted fluorescence nanoscopy with multiple off states. Nat Photonics. 10;122–128:2016.

P Panza, J Maier, C Schmees, U Rothbauer , C Söllner. Live imaging of endogenous protein dynamics in zebrafish using chromobodies. Development. 2015 May 15;142(10):1879-84.

A Rocchetti, C Hawes, V Kriechbaumer. Fluorescent labelling of the actin cytoskeleton in plants using a cameloid antibody. Plant Methods. 2014 May 19:10:12.