Proteintech are setting the benchmark in antibody validation.
抗体特異性は、複数の独立した文献において研究者にとって大きな懸念材料であると述べられており(1~3)、ユーザーが新たな抗体メーカーを選択する際に最重要視されています(4)。
RNA干渉(RNAi)は、ノックダウン動物モデルを用いる以外で、抗体特異性の最も信頼のおける試験法ですが、現在のところ抗体産業における日常的な試験には適用されていません。プロテインテックによるRNAi試験法は、今後すべての新製品に対して実施される予定で、すでにいくつかの段階の現行製品へ遡及的に適用されています。
RNAi実験を展開することで、研究者が抗体実験に貴重な時間とリソースを費やす前段階において、気軽に利用できる抗体検証のゴールドスタンダードを樹立します。当社のこの試みは、新たなベンチマークを定め、おそらく市販抗体の検証基準を全体的に向上させるというさらなる意味合いを持つでしょう。
プロテインテック製品のsiRNA検証例
(左図)AKT1 のsiRNA検証結果、緑:チューブリン、赤:AKT1(カタログ番号:10176-2-AP)、Eva Martinez-Balibrea博士提供
(右図)SDS-PAGE後、TARDBP/ TDP-43抗体(カタログ番号:10782-2-AP、希釈倍率:1:1000)を用いてウェスタンブロットを実施したA549細胞(コントロールおよびTDP-43のshRNA処理)
検証に使用した抗体:
販売中の1,000種類以上の抗体は、siRNA処理サンプルで検証を実施しています。
ターゲット名 | カタログ番号 | アプリケーション | 抗体タイプ |
AKT antibody | 10176-2-AP | ELISA,WB,IHC,IP,FC | Rabbit poly |
TDP-43 antibody | 10782-2-AP | ELISA,IF,WB,IHC,IP,FC | Rabbit poly |
データシートにこのアイコンがある製品は、siRNA処理サンプルによる検証を実施しています。
参考文献
(4) Christi Bird. Antibody user survey. The Scientist magazine.2012 May 1, www.the-scientist.com
標的サイトの選択
利用可能な文献やオンラインのshRNA設計ツールを確認し標的サイトを決定します。
pGenesil-1-shRNA発現ベクターの構築
標的shRNAをコードするセンス鎖と、相補鎖(アンチセンス鎖)の、2種類の一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(19~22mer)を設計します。2つを細胞内で発現させると、両者がアニーリングして最終的に二本鎖オリゴヌクレオチドを生成します。
ループ配列
2つの配列(センス鎖とアンチセンス鎖)は、発現時にヘアピンループ構造を形成する短いリンカー配列によって同じ鎖上で連結しています。様々なループ配列が機能的に利用できることが報告されていますが、プロテインテックではTTCAAGACGの配列を使用しています。
その他の詳細
shRNA鋳型の末端には、終結シグナルとして6ヌクレオチドのポリ(T)テールが付加されています。2種類のオリゴヌクレオチド鎖の5'末端は非相補的で、制限部位BamHⅠとHindⅢで突出末端を形成しpGenesil-1ベクターへの方向性クローニングを効率的に行うことができます。
RNAi(RNA干渉:RNA interference)は、配列特異的な遺伝子サイレンシングを実験室レベルで実施できる比較的新しい技術です。RNAiは、当初植物で発見され、後に動物でも確認された同名の生物学的プロセスに基づいています。自然界では、RNAiは寄生ヌクレオチド配列(例:ウイルスやトランスポゾン)から細胞を防御する際に重要な役割を担っており、発生にも影響します。
RNAiは、遺伝子転写からタンパク質翻訳の中間段階であるRNAレベルでの遺伝子発現制御機構であり、タンパク質生合成のためのメッセンジャーRNA(mRNA)を阻害することにより機能します。研究室の実験では、細胞等への合成dsRNAの導入やshRNA(small hairpin RNA)をコードするプラスミドDNAベクターの導入によって行われます。dsRNAやshRNAはその後プロセシングを受け一本鎖siRNAとなり、このsiRNAは相補的配列をもつmRNAと結合します。siRNAの結合により標的mRNAが「サイレンシング」されると、細胞内プロセスを経て分解されます。RNAi法は、遺伝子の「ノックダウン」の一形態で、成功すると標的タンパク質の発現レベルがウェスタンブロットの検出下限以下に著しく低下します。その際、ウェスタンブロット膜上でshRNA処理サンプルのシグナルが消失(または著しく減少)している場合、抗体が特異的であることを同定できます。
図1. プラスミド発現ベクターによりsiRNAを細胞で発現させた際のRNAiの作用(概要)