GSTタグ融合タンパク質のアフィニティ精製、除去、免疫沈降(IP)

プロテインテックのGST-Trap(GSTトラップ)を様々なアプリケーションで使用した論文を紹介します。

 

本稿では、様々なアプリケーションで優れた結合能を発揮するクロモテック(2020年よりプロテインテックの一部)のGST-Trapを使用したいくつかの論文をピックアップして紹介します。GST-Trapのアプリケーションには、免疫沈降(IP:Immunoprecipitation)、GSTタグ融合タンパク質(GST:Glutathione S-Transferase、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ)の共免疫沈降(Co-IP:Co-immunoprecipitation)、GSTタンパク質やGSTタグ融合タンパク質のLuminex® Assay(蛍光ビーズアッセイ)等が挙げられます。GST-Trapは、GSTタグ精製で頻繁に利用されるグルタチオン‐セファロースを代替可能な製品であり、組換え融合タンパク質から切断後のGSTタグの除去や、GSTタグ融合タンパク質のアフィニティ精製に適用することができます。

アプリケーション

参考文献

IP

Bonhoure, A. et al. Acetylation of translationally controlled tumor protein promotes its degradation through chaperone-mediated autophagy. European journal of cell biology 96, 83-98, doi:10.1016/j.ejcb.2016.12.002 (2017).

IP

Brenke, J. K. et al. Identification of Small-Molecule Frequent Hitters of Glutathione S-Transferase-Glutathione Interaction. Journal of biomolecular screening 21, 596-607, doi:10.1177/1087057116639992 (2016).

IP

Costello, J. L. et al. ACBD5 and VAPB mediate membrane associations between peroxisomes and the ER. J Cell Biol. 216, 331-342, doi:10.1083/jcb.201607055 (2017).

Co-IP

Au Yong, J. Y. et al. The Nim1 kinase Gin4 has distinct domains crucial for septin assembly, phospholipid binding and mitotic exit. Journal of Cell Science 129, 2744-2756, doi:10.1242/jcs.183160 (2016).

Co-IP

Haque, M., Stanfield, B. & Kousoulas, K. G. Bovine herpesvirus type-1 glycoprotein K (gK) interacts with UL20 and is required for infectious virus production. Virology 499, 156-164, doi:10.1016/j.virol.2016.09.003 (2016).

Co-IP

Li, Z., Zhou, L., Prodromou, C., Savic, V. & Pearl, L. H. HECTD3 Mediates an HSP90-Dependent Degradation Pathway for Protein Kinase Clients. Cell reports 19, 2515-2528, doi:10.1016/j.celrep.2017.05.078 (2017).

Luminex® assay

Groll, N., Emele, F., Poetz, O. & Rothbauer, U. Towards multiplexed protein-protein interaction analysis using protein tag-specific nanobodies. Journal of proteomics 127, 289-299, doi:10.1016/j.jprot.2015.04.017 (2015).

GST-Trapの結合特性解析

ホワイトペーパー(プロテインテック):Immunoprecipitation of proteins at very low expression levels using GST-Trap and MBP-Trap[PDF

GST-Trapは、製品の機能性試験に加えて、使用されているVHH抗体(別名:Nanobody®)のアミノ酸配列の解析も実施されているアフィニティ試薬です。上記の表で引用したプロテインテックのホワイトペーパー「Immunoprecipitation of proteins at very low expression levels using GST-Trap and MBP-Trap[PDF]」は、GST-Trapの結合特性の詳細や、解離定数=1 nMと低い値を示すGST-Trapの高い親和性について言及しています。そして、これらの特性に由来する特長をどのように活用できるかについて概説しています。さらに、発現させたGSTタグ融合タンパク質がサンプル中に低濃度で存在する場合にも、効率的なプルダウンが可能であることを示すデータを掲載しています。解離速度(koff)の値が低い(解離速度が遅い)ことから、洗浄ステップで長時間洗浄することが可能です。これらの理由から、GST-Trapは免疫沈降、アフィニティ精製、GSTタグ融合タンパク質の除去において優れたツールといえます。

 

プロテインテックでは、Nano-Trapのサンプルを無償で提供しています。下記フォームよりご依頼ください。

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GST-Trapは、アガロースビーズに結合したアルパカ重鎖抗体由来の単一ドメイン抗体(sdAb:single-domain antibody、別名:VHH、Nanobody®)からなる製品です。VHH抗体(別名:Nanobody®)の抗原に対する優れた結合特性は、三次元構造エピトープを認識する高い特異性によるものです。GST-TrapをはじめとするNano-Trapシリーズ製品は、立体構造をとるタンパク質と結合することから、プロテインテックではウェスタンブロット(WB:Western blot)アプリケーションにおける変性タンパク質を認識する抗体も同時に取り扱っています。多くの場合、SDS-PAGEの際は変性タンパク質を泳動するため、ウェスタンブロットでは一次構造に基づく直線的な配列のエピトープを認識する抗体が用いられます。GSTタグを検出する場合、ChromoTek GST Monoclonal antibody(カタログ番号:6G9)がウェスタンブロット用の抗体に該当します。

GST発現BL21細胞抽出物のウェスタンブロット画像

図1. GST発現BL21細胞抽出物のウェスタンブロット解析。使用抗体:GST抗体(カタログ番号:6g9