抗体検索/比較サイト:最適な抗体を迅速に見つける方法
最適な抗体を迅速に見つけましょう!
抗体試薬は、増加傾向にあるバイオアッセイを支えており、欠くことのできないバイオメディカル研究ツールです。そのため、現在のライフサイエンス分野の論文では、抗体に基づく技術を使用していない論文を見つけることの方が難しいかもしれません。
多くのバイオテクノロジー企業は、この必要不可欠なラボリソースを既製品として販売しています(既製品はコストと作業時間を大幅に削減します)。特定疾患の関連製品を専門とする数百の小規模な企業から、数万の抗体を取り扱う大企業まで存在し、抗体市場は既製品の免疫グロブリンで「飽和状態」にあります。抗体製品の膨大な品目数は、幅広い研究アプリケーションの存在と共に、将来の科学的発見に対する予測不可能性も反映しています。すなわち、企業と抗体市場は、近い将来必要とされるかもしれないターゲットをすぐに入手できる体制を整えておく必要があるのです。
理論的には、抗体の品目数が充実することで研究者が理想的な抗体を見つけられる可能性が高くなると思われるでしょう。しかしながら、実際には「抗体の選択ミスをする」か、「どこから手を付けていいかわからなくなる」のいずれかのケースに陥ってしまいます。
豊富な抗体の「金脈」を簡単かつ便利に堀り当てたいというニーズに応えるために、いくつかの抗体比較サイトが開設されています。現在、検索エンジンで「antibody search」と入力すると、Antibodypedia.com、CiteAb.com、AntibodyResource.com、Biocompare.com等の様々な抗体検索サイトが表示されます。こうしたサイトは便利なだけでなく、中には検証実績や率直なユーザーレビューを提供しているサイトもあり、抗体の性能を一括で調べることができます。しかし、それぞれのサイトはどのような特長があり、どのように活用したら良いのでしょうか?
Antibodypedia
Antibodypediaは、抗体比較サイトのリストに比較的新しく加わったもので、ユーザーレビューに大きく焦点を当てています。スウェーデンのストックホルム王立工科大学とNature Protocolsとの共同プロジェクトとして立ち上げられたこのサイトは、ユーザーが投稿したデータをアップロード前にレビューする、「マイクロジャーナル」*のスタイルを取っています(ただし、このサイトが親ジャーナルのような権威を持つようになるには、まだ少し時間がかかるかもしれません。今後に期待しましょう!)。数十社のサプライヤーが販売している数百万品目に及ぶ抗体に関する情報をレビューしており、約2万種類のヒトタンパク質ターゲットを網羅しています。この膨大な情報の検索は、遺伝子を中心としたものであり、ターゲットとなるタンパク質の遺伝子名を入力するだけで、関連する結果が得られます(後述)。
*参考: Tool Tales: Antibodypedia - Searching for the Perfect Partner
便利なことに、検索によるヒット件数は直ちに判明します。例えば、アルツハイマー病等の神経変性疾患を研究する際に対象となる遺伝子TARDBPの場合は、現在は47社が1,007品目取り扱っています(2022/5/20時点)。販売業者名、カタログ番号、抗体の種類(ポリクローナル、モノクローナル)等の基本情報に加え、様々なアプリケーションにおける検証データのサマリー(緑の円グラフ)が表示されます。こうした視覚的な全体像は、引用数や交差反応性等の情報を考慮に入れたうえで、候補リストのどの抗体を検討するかを決めるために素晴らしい指標となります。プロテインテックのエントリーを数種類確認したところ、この検証サマリーは正確でした。ただし、Antibodypediaに投稿された独自のユーザーデータを、販売業者のウェブサイト上のデータよりも信用して良いかどうかはご自身で判断する必要があります。(プロテインテックの製品も含め、掲載されているデータの中には関連する研究分野の専門家が投稿しているデータもあります)。
プロテインテックの関連製品:TARDBP
Antibodypediaで重要かつ便利なその他の機能として、検索結果を改善することができる「高度な検索(advanced search)」と比較機能があります。特定の実験で推奨される抗体や、特定の業者が扱う抗体を検索したい場合、「Filter」機能を使用すれば瞬時に検索結果を絞り込むことができます。さらに、ウェブ上の比較機能ボタン「Compare Selected」を使用すれば、興味のある抗体の詳細について、時間をかけて別々に閲覧する方法よりも、はるかにユーザーフレンドリーな表示方法で比較・検討することができます。
ただし、Antibodypediaにはいくつかの課題も存在します。例えば、上記の図のように、カタログ番号H00023435-M01の抗体は2社の取扱業者名で二重にエントリーされています。これは誤った表示ではなく、この抗体が製造業者(Abnova Corporation社)と販売業者(Novus Biologicals社)の両者によって販売されているためです。これは特に深刻な問題ではありませんが、複数社が販売している同一抗体の検証データが一致しない場合、利用者側で乖離を調整する必要が出てきます。その他の気を付けるべき思わぬ落とし穴に、論文使用実績の件数が正確ではない場合があることが挙げられます。実際のところ、上述のTARDBP抗体を例にすると、Antibodypediaはプロテインテックの製品について、論文使用実績を誤って引用しています。プロテインテックのTARDBP抗体(カタログ番号:12892-1-AP)は、Antibodypediaに掲載されている使用文献数(REFS)よりも自社HPに掲載されている使用文献数の方が多く、別のTARDBP抗体(カタログ番号:10782-2-AP)についても同様に自社HPの方が論文使用実績数は多くなっています(あくまでも微々たる違いです)。こうした事例は、各社のホームページで候補抗体の論文使用実績数をダブルチェックする必要性を浮き彫りにしています。その他のアドバイスとして、バランスよく検索結果を得られるよう別の比較サイトを利用することをおすすめします。どのサイトを利用するかは利用者次第です。
CiteAb
もう1つのアカデミアが主体となっている抗体比較サイトは、Bath大学Biology & Biochemistry学科のAndrew Chalmers博士が設立したCiteAbです。このサイトは、ESPRC Knowledge Transfer Champion Fundingの助成を受け、抗体製造企業各社、Xenbase(https://www.xenbase.org/xenbase/)、CiteAb等のユーザーからの情報提供を元に成長を遂げています。現在、CiteAbの検索エンジンは、数百万種類を超える抗体を検索可能で、抗体に関する情報がシンプルかつユーザーフレンドリーに展開しています。このサイトの大きな特徴は、発表論文を独自に収集することに尽力しているため、引用情報の信頼性が高いという点です。ユーザーは抗体の情報と共に自身の発表論文の詳細をCiteAbに投稿することができるようになっており、多くのユーザーが投稿することで研究分野に貢献し最新の情報を共有する文化を育むことが期待されます。
Antibody Resource
Antibody Resourceは、90年代までその起源を遡ることができる抗体比較サイトで、開設以来、科学者と抗体業界のベテランによって今日のウェブサイトに発展し、顧客とサプライヤー双方の利益を融合させています。現在では100社以上に及ぶ販売業者の200万種類を超える抗体データに対応する数万種類を超えるタンパク質ターゲットを網羅しています。ユーザーフレンドリーなマトリックスフィルター等の多くの便利なナビゲーションツールを特色としており、研究者は特定の製品を迅速かつ容易に探すことができます(下の画像をご参照ください)。
Antibodypediaと同様に、Antibody Resourceには適切な抗体を選択するにあたって詳細な情報に基づいて判断するための基本的データがすべて揃っています。ただし、Antibody Resourceは他のサイトよりも一歩進んでいて、検索結果にデータの画像が表示されます(現在、こうした表示機能があるのはこのサイトだけです)。これにより1つのウェブページ上で検証データをより簡単に閲覧できるようになっています。
Antibody Resourceのもう1つの便利な機能は、人気製品表示バーです(PAX8抗体の検索結果上部をご参照ください)。この欄は、他のユーザーの閲覧履歴が反映され、似たような研究者が何を閲覧し、何を購入したかわかるようになっています。
重要な点は、Antibody Resourceの検索結果はサプライヤーが販促している人気商品の影響を受ける可能性があるということです。しかし、サイト側は1種類の抗体が検索結果や条件検索で優先的に表示されないことを保証しています(つまり、1社による独占的な宣伝は行われないということです)。サプライヤーが売り上げを伸ばすための宣伝と考えられますが、アルファベット順に検索結果が表示されないため、ユーザーとサプライヤー双方にとって有益となる可能性もあります(そのため、「A」から始まる企業だからといって検索結果の上位に表示されるとは限りません)。
Biocompare
便利さを実感できるその他の比較サイトとして、Biocompareが挙げられます。その理由は膨大な種類の市販抗体やその他の市販製品(顕微鏡、細胞培養製品等を検索可能です)をカバーしているからです。ホームページをクリックして抗体検索ページを見れば、Biocompareがユーザーフレンドリーでシンプルなレイアウトで、便利な編集セクションを備えていることがすぐにわかります。先に述べた比較サイトと同様の基本情報が掲載されていますが、検証データの概要やユーザーレビューへのリンクはなく、研究者からの独自の製品評価が閲覧できる別の製品レビューセクションがあります。繰り返しになりますが、Biocompareはサプライヤーが検索結果に影響を与えることが可能です。これは、特定の検索において「スポンサー製品」の結果セクションが存在することから容易にわかります。
プロテインテックからのメッセージ:お気に入りの抗体検索エンジンや異なる検索方法をご存じですか?プロテインテックにぜひご意見をお寄せください!@Proteintechでツイートしてください。
本稿は、プロテインテックのゲストブロガーであるHarsh Amin氏とプロテインテックのブログ編集者であるDeborah Graingerの共同執筆による記事です。