科学者のためのBCA、ブラッドフォード、およびUVによるタンパク質定量法の比較
BCA法、ブラッドフォード法、UV法の長所と短所について解説します。
サンプル中のタンパク質量の測定は、生物学的研究や医学的診断に不可欠です。ある薬物を添加した後に特定タンパク質濃度の急激な上昇や低下が認められた場合、生物応答の機序に重要な役割を担っていることが示唆されます。ラボでは、ウェスタンブロットや蛍光標識等の化学反応を実施するために、正確なタンパク質濃度を求める必要があります。医療機関では、ELISA等の高感度な手法を使用したCOVID-19患者のインターロイキン等のサイトカイン測定が、疾病の重症度の予測に役立つ可能性があります(PMID:32283152)。
サンプル中のタンパク質濃度や溶液中のタンパク質濃度を測定する方法はいくつかあります。その中でも、BCA法、ブラッドフォード法、UV(紫外線:ultraviolet)法は科学研究において最も幅広く使用されている方法です。それぞれの方法は異なる科学的原理に基づいており、それぞれに長所と短所があります。プロテインテックのHumanKine®製品のサイトカインや増殖因子については、感度の高さと測定濃度範囲の広さからBCA法を使用しています。抗体については、以前はブラッドフォード法を使用していましたが、より感度が高く必要なサンプル量が少量であることから、ナノドロップ分光光度計を使用したUV法に移行しました。
プロテインテックの関連製品:HumanKine® サイトカイン&増殖因子
BCA法
BCA法では、BCA(ビシンコニン酸:Bicinchoninic acid)、硫酸銅(Cu2+)、タンパク質間の発色反応を利用します。アルカリ性条件下では、タンパク質のペプチド結合が2価の銅イオンを1価の銅イオンに還元します。1価の銅イオンはBCAによってキレートされ562nmの光を強く吸収する安定な錯体を形成し、溶液は緑色から紫色に変化します。還元反応はタンパク質濃度に比例するため、プレートリーダーや分光光度計によって測定した562nmにおける溶液の吸光度(紫色を呈する)をタンパク質濃度の計算に使用します。
BCA法の長所:
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高感度
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広い検出範囲(20~2000ug/ml)
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簡便で迅速な(45分前後)プロトコール
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高価な装置を必要としない
BCA法の短所:
- 反応は、還元剤やキレート剤(例:EDTA)の影響を受ける
ブラッドフォード法
ブラッドフォード法は、クマシーブリリアントブルー法としても知られています。この方法は、その発明者であるジョージア大学のMarion Bradford博士にちなんで命名されました。クマシーブリリアントブルーは、トリフェニルメタン色素で、タンパク質と結合すると、カチオン性で赤色を呈する色素(非結合型)からアニオン性で青色を呈する色素(結合型)に変化します。タンパク質が存在すると、赤色色素分子の負に荷電したスルホン基がリシンやアルギニン等の正に荷電した側鎖に電子を供与します。これにより、タンパク質は不安定化して、ファンデルワールス相互作用が促進し、色素と反応する疎水性残基が露出して、青色を呈するアニオン性色素との安定な複合体を形成します。青色色素の吸収極大は595nmであり、この複合体の吸光度は、ある一定の範囲で結合タンパク質量と直線相関を示します。
ブラッドフォード法の長所:
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ワンステップ、10分未満のアッセイ
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高価な装置を必要としない
ブラッドフォード法の短所:
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相当量のサンプルを使用する
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反応は、一般的なタンパク質用界面活性剤(例:Triton X、SDS)の存在に影響を受ける
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塩基性アミノ酸の量が平均を上回る、または平均を下回るタンパク質には有用ではない
**注:タンパク質濃度検出用のクマシーブリリアントブルーG250と、PAGEゲル染色用のクマシーブリリアントブルーR250は同じものではありません!G250は、タンパク質と迅速に反応しますが、ゲルの染色が遅いため、タンパク質の定量に適しています。R250は、タンパク質と徐々に反応し、ゲルの染色が速く、溶出しやすいため、PAGEゲルの染色により適しています。
UV法(ナノドロップ)
UV法では、紫外線分光光度計を用いてタンパク質の濃度を予測します。これはタンパク質分子中の芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン等)には共役二重結合がありUVを吸収できるという性質を利用しています(吸収極大は280nm)。ランベルト・ベールの法則に基づき、UV吸収の測定値で濃度を計算します。
UV法の長所:
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極めて感度が高い
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追加の試薬を必要としない
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少量のサンプルを使用
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アッセイはタンパク質活性に影響を与えない
UV法の短所:
- 核酸等、280nm付近で光を吸収する化合物との干渉がある
- 芳香族アミノ酸の量が平均を上回る、または平均を下回るサンプルを測定するためには、適切なリファレンスタンパク質を必要とする
タンパク質濃度を測定するための完璧な手法は存在しません。そのため、サンプルに最適な測定方法の選択が重要となります。
参考文献:
1. Zhou Yuenan, Wang Zhan, etc. Talking about the quantitative detection method of protein content[J]. Food Research and Development, 2014.
2. Fan Shuangshuang, Li Zhengping. Comparison of several methods for detecting protein concentration[N]. Journal of Chengde Teachers College for Nationalities, 2004
3. Fan Huajie, Li Wenjie. Reasonable application of protein quantitative methods[J]. Chinese International Medical Journal, 2003