フェローシップを活用した研究者としてのキャリアアップ
フェローシップへの応募を検討する方々に向けて、役立つヒントとアドバイスをお届けします。
科学コミュニティで実績を残し、研究者としてキャリアを重ねる過程でフェローシップに採択されるには、科学研究に対する広い視野、多様なバックグラウンドを持つ人々と交流できる能力、新たなスキル獲得に対する熱意と柔軟に学ぶ姿勢が欠かせません。
本稿では、Sophie Quick氏(英国Edinburgh大学)、Adriana Bankston氏(米国California大学)と共同で、世界各国のフェローシップに応募する際に参考となるアドバイスを1つずつ詳しくご紹介します。
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目次 |
1. フェローシップの重要性
科学分野の将来のためにも、バイオメディカル分野の人材育成のためにも、助成金事業は極めて重要な存在です。Nature Careers(nature.com)をはじめとする様々なサイトに世界各国の研究者の募集情報が掲載されていますが、独立した研究資金を獲得することで研究者は専門的に成長し、希望するポジションを獲得できるようになります。フェローシップとは科学の未来を担う事業であり、研究者が専門分野で自立し、研究活動に邁進して成功を収めるために極めて重要な存在であるといえます(1)。とはいえ、研究者の目指す目標を達成するために最も効果的なフェローシップがどれであるかという疑問は残されます。
近年の調査では、独立した研究室を運営する研究者になるための橋渡しとして、育成目的の助成金(Training award)が果たす役割の重要性が高まりつつあるものの、大学等でポジションを獲得するために必ずしも必要とされない可能性があることが示されています(2)。別の調査では、研究者育成プログラムの助成金受給者は、将来的に米国立衛生研究所(NIH)から交付される研究資金の獲得確率が高まると述べられています(3)。フェローシップへの採択によって研究室を主宰できるようになる一方で、アカデミックポストで成功を収めるためにNIHの育成目的の助成金が必要であるか否かについては、さらなる調査が必要とされます。
2. フェローシップの募集情報を探すには
応募可能なフェローシップを自力で探すのは容易ではありません。まずは先輩の研究者にアドバイスを貰い、全体像を把握するのが最も賢明なアプローチです。また、プロテインテックのブログ「Top Tips for a Successful Transition to a Postdoc Role」では世界各国のポスドク研究者が提供するアドバイスやヒントを紹介しています。
米国におけるフェローシップ
非営利団体であるFuture of Research(futureofresearch.org)は、INTER-SECTプログラムの一環としてセントルイス・ワシントン大学と共同で、政策提言のためのデータ収集用のワークシートを活用してボランティアの協力を仰いだ調査を主導しています。2024年に活動を終了しているものの、Future of Researchの取り組みはアーカイブにまとめられており、研究フェローシップの募集機関に関する情報の他に、フェローシップ獲得が給与や福利厚生に与える影響や制度上の違い等が掲載されています。米国のフェローシップ制度の公募元は多岐にわたり、院生向けのGradSchools.com(gradschools.com)のような総合サイトの他、ポスドクを対象としたPostdoctoral Funding Opportunities(research.jhu.edu)のような個別の機関のサイトで詳細な情報を確認できます。
他にも、応募資格を満たすフェローシップを調べるための情報提供サイトは数多く存在します。例を挙げると、ECRcentral(ecrcentral.org)のFunding検索では募集対象・資金提供者・対象国別に、主に若手研究者を対象にした多彩な募集情報を確認できます。

欧州におけるフェローシップ
European Council of Doctoral Candidates and Junior Researchers(Eurodoc)(eurodoc.net)は、欧州各国のフェローシップに関する情報を提供しており、リンク集を通じて連携する資金提供機関が運営する外部サイトにアクセスできます。その他にも、Marie Curie Alumni Association(MCAA)のニュースレターには、学生向け・若手研究者向け等の各ステージに応じた欧州の資金提供に関する有用な情報が紹介されています。
資金提供機関はオンライン上でフェローシップ等の公募に関する包括的な情報を発信しています。ポスドク向けの著名なフェローシップの1つに、あらゆる研究分野を対象とし、研究費や生活支援金が支給されるMSCA(marie-sklodowska-curie-actions.ec.europa.eu)のフェローシップ制度が挙げられます。MSCAのフェローシップには多くの有益な点があり、私自身は自国以外で研究に従事する外国人研究者向けのフェローシップに採択された経験を持ちます。自国以外での研究を検討する場合、ビザの申請費用や転居費用等の追加の補助金も受け取ることができます。海外での研究活動を検討している場合は、アカデミアでのキャリアアップに向けた海外移住の展望、海外における実際の研究生活、直面する重要な課題に関するプロテインテックのブログ「Why studying abroad makes sense: Scientists share their story」もご参照ください。

MSCA資金提供経験者による同窓会(MCAA)イタリア支部メンバーの集合写真
写真提供:Alberto Scarpa
2018年に誕生したUK Research and Innovation(UKRI)(ukri.org)が提供する資金援助プログラム「Future Leaders Fellowships」は知名度こそ高くありませんが、資格要件等のいくつかの条件を満たした若手研究者やイノベーターを対象とする制度です。最長で3年間延長できる4年間の資金援助があり、パートタイム勤務も選択可能で、仕事と私生活を両立させやすいという大きなメリットがあります。
英国Wellcome Trust(wellcome.org)も助成金プログラムを提供しており、その検索サイトは博士研究員・若手研究者等の対象者別に目的の公募情報を調べやすい構成になっています。英国Leverhulme Trust(leverhulme.ac.uk)は、様々な分野の10種類前後の奨学金・フェローシップ制度等の公募を行っており、若手研究者やキャリアを重ねた研究者を対象に資金を提供しています。
ブランクを経て復職を希望する研究者の場合、Career Returners(careerreturners.com)等の多数のサイトが研究者として復帰するための情報を提供しています。Daphne Jackson Trust(daphnejackson.org)は2年以上のブランクのある研究者の復職を支援し、産後に復職を果たした女性研究者のインタビュー等も掲載されています。
欧州の中には、国外で活動し、帰国後に研究職に就く研究者への助成金を支給する国もあります。過去には、Foundation for Polish Science(fnp.org.pl)がHOMING fellowshipというプログラムを提供していました。このプログラムは、ポーランド出身の卓越した研究者が自国の研究機関や国外の研究機関の協力を得て、ポーランド国内の研究機関や企業で活動するための支援を行っていました。
3. フェローシップに採択されるには
研究目的や自身の専門性が資格要件に沿わないプログラムに応募して貴重な時間を無駄にしないよう、最も条件が合致する助成金プログラムを特定することが重要です。どのプログラムに応募するか決断したら、選考を勝ち進むための計画書をまとめましょう。アブストラクトの作成は、研究計画への理解と関心を高め、自身の将来的なキャリアを確保するうえで必須の過程であり、研究を進める際にも、フェローシップ採択のためのアイデアをまとめる際にも役立ちます。アブストラクトのまとめ方に関する情報はプロテインテックのブログ「優れた抄録/アブストラクトの書き方」もご参照ください。
申請が採択される際に最も重要なのは、説得力のある革新的で明解な研究計画です。外部のガイダンスを参考にしながら執筆を進めることで、応募書類の質をさらに高めることができます。フェローシップの申請書類には、多くの場合複数の項目があります。例えばMSCAの場合は、Excellence・Impact・Implementationの3項目があり、それぞれ高い水準が求められるため妥協は許されません。特定の項目の評価が高かったとしても、他の項目の不備を補うことはできません。CV(履歴書)はその他の申請書の陰に隠れて軽視されがちですが、実際は選考プロセスの中で大きなウェイトを占めています。したがって、大学の研究支援オフィス、パブリック・エンゲージメント担当者、PI等の申請に精通した複数の専門家にアドバイスを求めましょう。
プロテインテックのワークショップに参加したベルリンの大学の国際色豊かな学生の皆さん
写真:Karolina Szczesna
募集要項を十分に確認し規定や形式に注意を払うことで、初歩的なミスで不採択になるという残念な事態を防ぐことができます。英語を第一言語としない場合、英文校正は必ず実施してください。一次選考の段階では専門外の審査員が書類に目を通す場合が多いため、私自身は校正・校閲に加えて専門分野と関係のない方に申請書類のチェックを依頼したことが対策として極めて有益でした。提出書類の正確性は極めて重要であるため、確認作業にはできる限り時間を割きましょう。そのために、書類はできるだけ早く準備するよう心がけましょう。精神的な負担を最小限に抑えるためにも、締切り間際の提出は避けましょう。締切り直前にアクセスが集中してサーバーがダウンし、提出に失敗するケースがあります。それでも締切りが延長されることはありません。
世界中の研究者の皆様がフェローシップに応募する際に、本ブログで紹介した資料が役立つことを願います。幸運にもフェローシップに採択された暁には、同僚や周囲の関係者たちへ手を差し伸べられる存在になりましょう。助けを求めることも、積極的に手を貸すことも大変重要です。お互いにサポートしあい、研究者同士で支え合っていきましょう。
ぜひ積極的に応募へ踏み出してください。皆さんが持つ無限の可能性を応援しております。
Karolina Szczesna博士著
(プロテインテックSenior Product Manager & Technical Support)
参考資料
1. Training awards increasingly important for future funding and landing a faculty job
*本稿の内容はCalifornia大学の公式見解を示すものではありません。
*本稿の情報は公開時点のものであり、最新の公募要領については必ず各機関のサイトをご確認ください。