ライフサイエンス研究者向け:一般企業のレジュメ/CV(英文履歴書)の書き方(海外)
キャリアチェンジを考えるライフサイエンス研究者のために、一般企業へ提出するレジュメ/CV(英文履歴書)の書き方を解説します。
アカデミア以外の募集職種やポジションに応募することは大変な挑戦に思えるかもしれません。アカデミアの研究業界に身を置いていると、転職に関して共感できるアドバイスを得ることが難しい場合もよくあります。何らかの求人に応募する際、「レジュメ(resume、北米の場合)」または「CV(curriculum vitae、カリキュラム・ビタエ、英国・欧州の場合)」と呼ばれる英文履歴書の作成・更新作業が最初のステップとなります。レジュメとCVは本質的には同一の書類であり、応募先の企業が大西洋のどちら側の地域にあるかによって名称が異なります。
レジュメ/CVには「Work experience(職歴)」、「Skill(スキル)」、「Education(学歴)」、「Achievement(業績)」等の概要を記載しなければなりません。本稿では、アカデミアの人材が企業の研究職/その他の科学職に応募する際に英文履歴書へ記載すべき内容に焦点を当てて解説します。なお本ブログ記事で紹介する内容は、おおよその手引き/概要として取り扱ってください。国、業界、会社によってはレジュメ/CVに記載するべき内容に関するガイドラインは異なる場合があります。実際に応募する際には、募集企業が公開する「職務記述書(job description)」や応募時の注意事項に必ず目を通しておきましょう。
※本稿では、以下の英文記事を日本語訳して掲載しています。
https://www.ptglab.com/news/blog/how-to-write-an-industry-resume-cv/
レジュメ/CV作成時の重要なポイント
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レジュメ/CVは2ページ以内に収まるように作成します。
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長い段落で書かないようにしてください。短く簡潔な文章がベストです。箇条書きを活用しましょう。
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専門用語の多用、研究に関する詳細すぎる記載は控えてください。募集されている職務に直接的に関連する場合のみ記載するようにしましょう。
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校正に校正を重ね、とにかく校正します。単語の綴りや文法的誤りがないように徹底的に確認しましょう。
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応募する職務に合わせて、その都度レジュメ/CVの内容を調整してください。
自分が採用担当者で1時間に50人のCVに目を通す必要があると想像してみてください。4ページに及ぶ単語数が多くて冗漫な文章で構成された応募書類は「不採用」の書類の山に積まれることでしょう。採用担当者がCV1枚を読むのに費やす時間はわずか75秒であることが明らかになっています(1)。
レジュメ/CV作成時のレイアウト
Personal and contact details(氏名・連絡先)
ご自身のお名前は最上部の中央に大きく太字で記載します(フルカラーで提出可能な場合は色を付けるという選択肢もあります)。記載した氏名の下にメールアドレス、電話番号、住所等の連絡先を記載します。住所をすべて記載したくない場合は、居住する市区町村までにとどめる方法もあります。
Personal statement(志望動機)
レジュメ/CVに志望動機を含める場合は、氏名・連絡先の下に志望動機を記載します。志望動機の項では、ご自身の業績を簡潔にまとめ、応募した職務でどのような価値を提供できるかを強調しましょう。本項は4~5文以内でまとめます。
Work experience(実務経験/職務経験)
現在または直近の経歴から、上から下に向かって新しい順で記載します。所属機関の横に役職を太字で記載し、開始日/終了日(月・年)の在籍期間を併記のうえ、時系列に沿って明瞭に記載します。当然、博士課程での担当プロジェクトや役割もWork experienceに記載することができます。
研究活動経験(research work experience)について記載する場合、応募する職種によって何を記載するべきかが異なる可能性があります。募集職種が研究職以外の場合、専門とする研究分野と担当していた業務を簡潔に記載します。学生の指導(student mentoring)や、研究室外での活動(outreach events)、執筆論文(paper writing)、ピアレビュー(peer-reviewing)、研究助成金申請(grant writing)、ラボミーティングでの発表(presenting at lab meetings)、研究助成金の予算管理(managing grant budgets)、消耗品の発注(consumables ordering)等の担当していた役割や業務も含めてください。ラボにおける役割や業務内容を含めることは、研究分野に関する技術スキルだけではなく、ラボ運営に関する一連の幅広いスキルを証明するものであり重要な内容です。
研究職の場合、実験手技に関する簡潔なリストが必要です。募集職務に関連する実験手技を記載することが重要であり、例えばアッセイ法の開発業務に応募する場合、電気生理学の技量について詳細に説明する必要はありません。研究職以外の職種に応募する場合は、例えば、免疫アッセイ、プロテオミクス研究、電気生理学、ビッグデータ解析といったように、経験のある実験手技の種類や研究分野の概要を記載すれば、自身の科学的技量を示すには十分であるはずです。
Awards and Achievements(受賞歴・業績)
受賞歴・業績に関する項では、発表論文(publications)、受賞歴(prizes)、獲得助成金(grants)、学会参加歴(conference attendances)等について言及します。多数の発表論文が存在する場合、全ての論文をリスト化しないでください。発表論文の数といくつかの論文名を記載する程度にとどめます。例えば、5年前から現在に至るまでの間にNature Communications誌等の上位ジャーナルに掲載された、合計5報程度のご自身が筆頭著者になった論文を記載します。すべての論文業績を掲載する必要がある場合は、メインのレジュメ/CVに別添資料(addendum)の追加を検討してください。
Education(学歴)
現在または直近の学歴から上から下に向かって時系列に沿って記載します。博士課程を修了していない場合は、例えば「September 2018–Present」のように博士課程に入学した月/年から現在までという形で記載します。多くの場合、Work experience(実務経験・職務経験)の項に博士課程のプロジェクトや担当や役割を記載することになります。その他に、プロテインテックのビデオを参考に、役に立ちそうな教育コースやワークショップに参加して本項の内容を充実させることも可能です。
学士号(Bachelor's degree)や修士号(Master’s degree)の場合、学位名(degree name)、在籍年数(years attended)、成績(grade)を記載します。すべての履修科目と個別の成績の記載はスペースの無駄になるため、リスト化する必要はありません。例えば、データサイエンティスト職に応募する場合、「Python/coding course」を履修したことを記載する等、職務に直接関係のありそうな履修科目だけをリスト化します。
卒業した高校の詳細や成績を含めることもできますが、1行程度の簡潔な記載にとどめてください。
Skills(スキル)
スキルの項には、応募する職務に関連するスキルを記載します。本項は短くまとめます。ソフトウェアの習熟度、使用可能な言語、運転免許証の取得の有無の記載を求められている場合も本項に記載します。
Hobbies and interests(趣味・興味のあること)
趣味・興味の項は任意(オプション)です。記載する場合は、簡潔に自身の個性を伝えることを目的にしましょう。研究室以外での側面や魅力を伝える内容にします。多くの場合、本項の内容は面接時にアイスブレイク等の場をなごやかにするために使用され、例えば「ロンドンマラソンを走ったのですね。素晴らしい。また参加しますか?」等のように聞かれるでしょう。
References(推薦状・紹介状)
レジュメ/CVに実名の推薦状や紹介状を添える必要はありません。場合によって「References available upon request.(ご要望があれば推薦状・紹介状を提出いたします)」とのみ記載できます。
最後に考慮すること
本稿で述べた内容はあくまで概要であることをご理解ください。レジュメ/CVに含める内容は応募する職務や国によって異なります。大企業の募集の場合、1枚の書類をアップロードする形式ではなく、オンラインフォームの各項目に記入する形式でレジュメ/CVの提出を求める企業もあります。時間をかけてレジュメ/CVを作成後、すぐに採用担当者に提出せずに、自分以外の人にも目を通してもらい様々な意見やアドバイスを聞くことも大切です。最後に、皆様の転職の成功をお祈りいたします!
若手研究者向けのキャリアやライフプランに関するその他のヒントについては、プロテインテックホームページ(英語版:www.ptglab.com)のECR(Early Career Researcher)Hubで紹介しています。