TurboGFP:特性、配列、分子量、由来

TurboGFPの性質やアプリケーションの概要について解説します。

 

TurboGFPは、細胞におけるタンパク質の機能、局在、動態を研究するために用いられる明るい緑色の蛍光タンパク質です。アルパカ由来のVHH抗体(別名:Nanobody®)を基にした研究用ツールによって、TurboGFP融合タンパク質の免疫沈降(IP)、質量分析(MS:Mass Spectrometry)、酵素活性測定等の生化学的手法を用いて再現性の高い結果を得ることができるようになりました。

 

1. TurboGFPとGFPの違いとは?

TurboGFPの由来

TurboGFPは、カイアシ類(Pontellina plumata)のCopGFPに由来する明るい緑色の二量体型蛍光タンパク質です。CopGFPは、2004年に初めて報告されました(Shagin et al., 2004)。

GFPの由来

当初、GFPはオワンクラゲ(Aequorea Victoria)から単離されました。現在では、EGFP、GFP S65T、YFP、CFP、mPhluorinの他、様々なGFPバリアント(誘導体、変異体/改変体)が存在します。これらの蛍光タンパク質誘導体は、機能特性やスペクトル特性が異なり、任意の特性を示すよう最適化が進められてきました。研究初期の主要なGFPの改良体に、蛍光シグナルの強度や持続時間を向上させ、主要な励起波長を488nmにシフトさせた1アミノ酸残基置換体であるGFP S65Tが挙げられます(Heim et al., 1995)。また、EGFP(enhanced GFP)は更に改良が加えられたGFPの組換え体であり、様々な生物や細胞に適用できる実用的なGFPとして使用される機会が増えています。

 

2. TurboGFPとGFPの物理化学的特性

TurboGFP vs. EGFP

 

TurboGFP

EGFP

波長

 

 

- 最大励起波長

482 nm

488 nm

- 最大蛍光波長

502 nm

507 nm

構造

二量体

単量体

分子量(kDa)

2 x 25.7 kDa

26.9 kDa

鎖長(アミノ酸残基数)

2 x 232残基

239残基

詳細情報:https://www.fpbase.org/protein/turbogfp/またはhttps://www.fpbase.org/protein/egfp/をご覧ください。

 

3. TurboGFPとEGFPの相同性:配列の比較

カイアシ類由来のTurboGFPは、オワンクラゲ由来のEGFP等の蛍光タンパク質とは進化的に遠縁の関係にあり、一般的に用いられるオワンクラゲ由来のGFPバリアントとの配列の相同性はわずか20%程度です。

注意:ほとんどのGFP抗体はTurboGFPには結合しません。また、ほとんどのTurboGFP抗体もGFPやGFPバリアントには結合しません。

ライトアップされたクラゲの画像

ライトアップされたクラゲ

 

4. TurboGFPの配列について

TurboGFPのDNA配列、アミノ酸配列、TurboGFP配列が含まれるプラスミドベクターに関する情報は、プラスミドベクターを販売する各社ホームページよりご覧いただけます。

例. Evrogen社:http://evrogen.com/products/products-index-alph.shtml

 

5. TurboGFPバリアント

TurboGFPには、「maxGFP」、「maxFP-Green」等のバリアントが存在します。

 

6. TurboGFP融合タンパク質の解析ツール

現在のところ、TurboGFPの解析に用いることのできる細胞生物学的ツールや生化学的ツールは種類が少なく限定されています。

  • 免疫沈降(IP:Immunoprecipitation):TurboGFP融合タンパク質の免疫沈降

TurboGFP融合タンパク質の免疫沈降や共免疫沈降(Co-IP)、免疫沈降サンプルの質量分析(MS:Mass Spectrometry)による解析を実施する際は、クロモテック(2020年よりプロテインテックの一部)のTurboGFP-Trapをご利用いただけます。TurboGFP-Trapは、免疫沈降用ビーズと共有結合した抗TurboGFP VHH抗体(別名:Nanobody®)からなる製品です。

TurboGFP-Trapは、copGFP、maxGFP、maxFP-Green等の蛍光タンパク質タグにも利用可能です。

 

  • ウェスタンブロット(WB:Western blot)・免疫細胞化学(ICC:Immunocytochemistry)

TurboGFPを認識する従来型の抗体製品:

Mouse monoclonal turboGFP antibod/Rabbit Polyclonal turboGFP Antibody(OriGene社)
Rabbit polyclonal anti-TurboGFP(d) antibody(Evrogen社)

 

  • ELISA

プロテインテックでは、NHSエステル反応により各種担体へ結合可能な、精製済みの抗TurboGFP VHH抗体を販売しています。

TurboGFP- Binding Protein(品番:TBT-250)

 

7. TurboGFP-Trap が免疫沈降に最適な理由とは?

TurboGFP-Trapは、免疫沈降用のアガロースビーズまたは磁性アガロースビーズと共有結合した抗TurboGFP VHH抗体(別名:Nanobody®)からなる製品です。VHH抗体(別名:Nanobody®)は、アルパカ、ラクダ、ラマ等のラクダ科動物から発見された「重鎖抗体(Heavy chain antibody、Heavy chain-only antibody)」に由来する小型の抗体で、免疫沈降を実施する際に従来型の抗体よりも優れた特性を示します。

  • 解離定数(KD=0.5 nM)と高い親和性でターゲットに結合します。
  • 免疫沈降用抗体に由来する重鎖や軽鎖のコンタミネーションを生じません。
  • バックグラウンドの低い結果を得ることができます。
  • 厳しい洗浄条件であっても目的タンパク質と解離せず、強固な結合を維持します。

TurboGFP-Trapを用いた免疫沈降サンプルのSDS-PAGEの結果。ビーズ結合画分に単一のバンドが確認できるTurboGFP-Trapを用いた免疫沈降サンプルのウェスタンブロットの結果。ビーズ結合画分に明瞭なバンドが確認できる

 

プロテインテックでは、Nano-Trapのサンプルを無償で提供しています。下記フォームよりご依頼ください。

無料サンプルリクエストフォーム

(※ 国内におけるプロテインテック製品の出荷および販売は、コスモ・バイオ株式会社を通じて行っております。
最寄りのコスモ・バイオ株式会社 代理店をご指定の上、ご依頼ください。)

 

リンク

http://evrogen.com/products/TurboGFP/TurboGFP_Detailed_description.shtml

参考文献

D A Shagin, E V Barsova, Y G Yanushevich, A F Fradkov, K A Lukyanov, Y A Labas, T N Semenova, J A Ugalde, A Meyers, J M Nunez, E A Widder, S A Lukyanov, M V Matz. GFP-like proteins as ubiquitous metazoan superfamily: evolution of functional features and structural complexity. Mol Biol Evol. 2004 May;21(5):841-50.

R Heim, A B Cubitt, R Y Tsien. Improved green fluorescence. Nature. 1995 Feb 23;373(6516):663-4.