V5タグの特性
V5タグ:特性、由来、性状、V5タグ抗体&VHH抗体(Nanobody®)
V5タグとは、タンパク質の検出および精製に用いられる短鎖のペプチドタグです。V5タグは、クローニング技術によって、組換えタンパク質に融合させて発現させることが可能です。V5タグ融合タンパク質は、V5タグに対する抗体やVHH抗体(別名:Nanobody®)を用いて、ELISA、フローサイトメトリー(FC)、免疫沈降(IP)、免疫蛍光染色(IF)、ウェスタンブロット(WB)等で検出できます。
- V5タグの立体構造
- 由来
- 特性
- V5タグのサイズ
- V5タグの性状
- V5エピトープタグ配列
- アプリケーション
- V5タグ vs DYKDDDDK (FLAG®)タグ
- V5タグ vs HAタグ
- V5タグ融合タンパク質の溶出方法
- V5タグ発現用プラスミド
- 抗V5タグ抗体&抗V5タグVHH抗体(Nanobody®)—無料サンプルリクエストフォーム
- 免疫沈降用ビーズ結合V5タグ抗体
- 参考文献
1. V5タグの立体構造
2. 由来
V5タグは、シミアンウイルス5(パラミクソウイルス科、SV5:simian virus 5)のRNAポリメラーゼのαサブユニットに関与するPタンパク質およびアクセサリータンパク質であるVタンパク質に共通のN末端配列に存在する95番目から108番目のアミノ酸配列に由来します。最初に言及されたのは、Journal of General Virology(1992)に掲載されたHankeらによる論文1でした。
3. 特性
V5タグには配列が「GKPIPNPLLGLDST(Gly Lys Pro Ile Pro Asn Pro Leu Leu Gly Leu Asp Ser Thr)」の14残基のアミノ酸が含まれます。また、頻度は低いものの、配列が「IPNPLLGLD(Ile Pro Asn Pro Leu Leu Gly Leu Asp)」の9残基のアミノ酸からなる短鎖型V5タグも使用されます。
4. V5タグのサイズ
アミノ酸残基数:14残基
分子量:1421.66Da
5. V5タグの性状
計算上の等電点(pI):5.84
負に荷電したアミノ酸残基数(Asp+Glu):1
正に荷電したアミノ酸残基数(Arg+Lys):1
6. V5エピトープタグ配列
V5タグのアミノ酸配列:
GKPIPNPLLGLDST(Gly Lys Pro Ile Pro Asn Pro Leu Leu Gly Leu Asp Ser Thr)
V5タグをコードするDNA配列
GGT AAG CCT ATC CCT AAC CCT CTC CTC GGT CTC GAT TCT ACG
注:ここで紹介しているDNA配列は哺乳類および昆虫の配列です。その他の生物のコドンに最適化された配列ではありません。
7. アプリケーション
V5タグタンパク質の最も一般的な用途は、ELISA、フローサイトメトリー(FC)、免疫蛍光染色(IF)、免疫沈降(IP)、タンパク質精製、ウェスタンブロット(WB)等です。
プロテインテックのアプリケーション
ELISA
フローサイトメトリー
免疫蛍光染色(IF)
免疫沈降(IP)
タンパク質精製
ウェスタンブロット
8. V5タグ vs DYKDDDDK (FLAG®)タグ
以下の表にV5タグとDYKDDDDK (FLAG®)タグの比較をまとめました。
|
V5タグ |
DYKDDDDK (FLAG®)タグ |
由来 |
SV5(simian virus 5、シミアンウイルス5)のPタンパク質およびVタンパク質 |
人工的にデザイン |
立体構造 |
||
アミノ酸配列 |
GKPIPNPLLGLDST |
DYKDDDDK |
アミノ酸残基数 |
14 |
8 |
分子量(Da) |
1421.66 |
1012.98 |
計算上の等電点(pI) |
5.84 |
3.97 |
負に荷電したアミノ酸残基数 |
1 |
5 |
正に荷電したアミノ酸残基数 |
1 |
2 |
9. V5タグ vs HAタグ
以下の表にV5タグとHAタグの比較をまとめました。
|
V5タグ |
HAタグ |
由来 |
SV5(simian virus 5、シミアンウイルス5)のPタンパク質およびVタンパク質 |
ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA、hemagglutinin) |
立体構造 |
||
アミノ酸配列 |
GKPIPNPLLGLDST |
YPYDVPDYA |
アミノ酸残基数 |
14 |
9 |
分子量(Da) |
1421.66 |
1102.17 |
計算上の等電点 |
5.84 |
3.56 |
負に荷電したアミノ酸残基数 |
1 |
2 |
正に荷電したアミノ酸残基数 |
1 |
0 |
10. V5タグ融合タンパク質の溶出方法
通常、グリシンやクエン酸を用いるか、V5タグペプチド(配列:GKPIPNPLLGLDST)を用いたペプチド競合溶出法を実施して、V5タグ融合タンパク質を溶出します。
11. V5タグ発現用プラスミド
哺乳類細胞、ショウジョウバエ等のV5タグ融合用プラスミドが、Thermo Fisher Scientific社やMerck(Sigma Aldrich)社より市販されています。
12. 抗V5タグ抗体&抗V5タグVHH抗体(Nanobody®)
V5タグペプチドを認識する、様々なタイプのポリクローナル抗体やモノクローナル抗体、およびVHH抗体(Nanobody®)(1製品)が市販されています。免疫沈降に関しては、ChromoTek(クロモテック:2020年よりプロテインテックの一部)のV5-Trap®の使用を推奨します。V5-Trap®に用いられているVHH抗体(Nanobody®)は、抗体の重鎖と軽鎖が存在せず抗体由来のコンタミネーションが生じないことから、従来の抗体と比較してバックグラウンドが低いという特長を示します。
プロテインテックの関連製品:V5-Trap®
V5-Trap®を無償で提供しています。下記フォームよりご依頼ください。
(※ 国内におけるプロテインテック製品の出荷および販売は、コスモ・バイオ株式会社を通じて行っております。
最寄りのコスモ・バイオ株式会社 代理店をご指定の上、ご依頼ください。)
13. 免疫沈降用ビーズ結合V5タグ抗体
プロテインテックでは、免疫沈降用ビーズ結合済みのV5タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)および未標識V5 タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)を提供しています。
V5-Trap® Agarose:アガロースビーズ結合V5タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)
V5-Trap® Magnetic Agarose:磁性アガロースビーズ結合V5タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)
V5-Trap® Magnetic Particles M-270:磁気ビーズ結合V5タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)
V5 VHH:未標識V5タグ抗体(VHH抗体、Nanobody®)