特集 : FTDおよび運動ニューロン疾患におけるC9ORF72
前頭側頭葉変性症と運動ニューロン疾患におけるC9orf72市販抗体のIHC評価
前頭側頭葉変性症(FTD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)
前頭側頭葉変性症(FTD:Frontotemporal lobar degeneration)と筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)は、重篤な神経変性疾患です。FTDは、脳の前頭葉と側頭葉の変性を特徴とし、65歳未満に限ると2番目に多いタイプの認知症です。ALSは、運動ニューロンに影響を及ぼし、その結果筋肉の変性が起こり、最終的に呼吸停止に至ります。
FTDとALSにおけるC9orf72
何十年にもわたる研究により、C9orf72中のGGGGCCのヘキサヌクレオチド反復配列伸長(HRE)が、ALSとFTDの重要な原因遺伝子の一つとして同定されました。
C9orf72 HREとこれらの神経変性疾患とを結びつけるメカニズム解明に寄与するため、プロテインテックは、ライセートによる間接ELISAやウエスタンブロット検証済みの、様々なモノクローナルC9orf72抗体(図1)およびポリクローナルC9orf72抗体(図2)を開発しています。これらの製品は、高いC9orf72特異性を有し、バックグラウンド染色が低く、また、他のタンパク質との交差反応性がほとんどない、効率的かつ強力として期待されます。
図1 | 図2 |
C9orf72抗体(カタログ番号:66140-1-Ig、希釈倍率::350)を使用したパラフィン包埋ヒト神経膠腫組織スライドの免疫組織化学(40倍レンズ)。Tris-EDTAバッファー(pH9)で加熱抗原賦活化を行った。 |
C9orf72抗体(カタログ番号:22637-1-AP、希釈倍率:1:50)を使用したパラフィン包埋ヒト神経膠腫組織スライドの免疫組織化学(40倍レンズ)。 |
Davidson Yらによる近年の研究において、プロテインテックのC9orf72抗体の高い特異性が確認されています。マンチェスター大学のDavid Mann教授が率いるグループは、プロテインテックを含むいくつかの供給元から市販されているC9orf72抗体を試験しました(表1をご覧ください)。
彼らは現在市販されている一連のC9orf72抗体を試験した結果、当社の抗体が競合品よりも優れており、様々な小脳構造すべてで低濃度のC9orf72に非常に特異的であることを実証しました。この結果は、研究および診断研究目的でのこれらの抗体の価値が大きいことを明らかにしています。この研究チームは、これらの抗体がより長鎖型のC9orf72タンパク質の検出においても信頼性が高いと述べました。
Y S Davidson, David M A Mann, et al. (2017)
一部の研究者は、C9orf72 HREはアルツハイマー病とハンチントン病にも寄与している可能性があると主張しており、このことはC9orf72、およびこれらの抗体が、神経変性疾患の研究においてさらに大きな役割を果たす可能性を示唆しています(1および2)。
表1
出典:Yvonne S. Davidson, Andrew C. Robinson, Sara Rollinson, Stuart Pickering-Brown, Shangxi Xiao, Janice Robertson & David M. A. Mann (2017): Immunohistochemical detection of C9orf72 protein in frontotemporal lobar degeneration and motor neuron disease: patterns of immunostaining and an evaluation of commercial antibodies(前頭側頭葉変性および運動ニューロン病におけるC9orf72タンパク質の免疫組織化学的検出:免疫染色のパターンと市販抗体の評価), Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration(筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭葉変性症). 出版者Taylor & Francis社の許可を得て転載
参考文献:
1. C9orf72 Nucleotide Repeat Structures Initiate Molecular Cascades of Disease