特集 : 増殖性細胞 - BrdUおよびKi-67細胞マーカー

増殖性の細胞は、細胞増殖と細胞分裂によって急速に拡大します。


BrdUとDNA合成

一般的に増殖の測定は、生細胞に色素を組み込み、DNA量やDNA合成、細胞代謝、増殖特異的タンパク質を反映する主要な増殖マーカーレベルを測定することによって行うことができます。

細胞が増殖するには、S期にDNAを合成する必要があります。したがって、一般的で信頼できる細胞増殖アッセイ法は、DNA合成の測定です。通常この手法は、生細胞を、新しく合成されたDNAに容易に組み込むことのできる化合物/色素と一緒にインキュベートすることによって行われます。DNAに組み込む化合物としては、チミジンのアナログ(類似体)が最も一般的です。

BrdU(Bromodeoxyuridine、ブロモデオキシウリジン、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン、BUdR、BrdUrd)は、チミジン類似体の一つである、合成ヌクレオシドです(図1)。生体組織中の増殖性細胞の検出によく使用されます。BrdUは、(細胞周期のS期において)複製細胞の新しく合成されたDNAに組み込むことができ、DNA複製中にチミジンと置き換わります。DNAに組み込まれたBrdUのIHCによる検出は、正常細胞と腫瘍細胞の細胞キネティクスの研究、および造血幹細胞(HSC)や前駆細胞などの感受性の高い希少細胞集団増殖の検出のための強力なツールです1in vitroおよびin vivoで腫瘍細胞をBrdUで標識した後、組み込まれたBrdUを特異的な抗BrdU抗体で検出するという方法は、DNA合成の程度を定量化する強力なツールとして広く使用されています(図2)。

 

BrdU抗体の免疫蛍光染色検証

図1. BrdU抗体(カタログ番号:66241-1-Ig、希釈倍率:1:300)およびAlexa Fluor 488コンジュゲートAffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)を使用したHeLa細胞(10%ホルムアルデヒド固定)の免疫蛍光染色。

BrdU抗体の免疫組織化学染色検証

図2. BrdU抗体(カタログ番号:66241-1-Ig、希釈倍率:1:400)を使用したパラフィン包埋マウス脾臓組織スライド(BrdU添加あり/なし)の免疫組織化学染色(10倍レンズ下)。Tris-EDTAバッファー(pH9)で加熱抗原賦活化を行った。

 

Ki67 – 増殖タンパク質用の高感度で特異的なマーカー

細胞増殖を研究するもう一つの方法は、増殖性細胞のみで発現する特定のタンパク質を調べることです。Ki-67タンパク質(MKI67)は、増殖細胞の細胞マーカーです(図3)。Ki67は、細胞周期の全活動期(G1、S、G2、およびM)に存在しますが、休止期(G0)の細胞には存在しません。Ki67の核発現を評価することで、腫瘍増殖をIHCによって評価できます(図4)。Ki67は定評のある増殖マーカーであり、癌の診断と予後予測に有用であることから、病理検査室で日常的に使用されています。最近の研究により、高増殖活性と癌の予後との間に関連性のあることが報告されています2,3

KI67抗体の免疫蛍光染色検証 KI67抗体の免疫組織化学染色検証

図3. KI67抗体(カタログ番号:27309-1-AP、希釈倍率:1:50)およびAlexa Fluor 488コンジュゲートAffiniPureヤギ抗ウサギIgG(H+L)を使用したHeLa細胞(4% PFA 固定)の免疫蛍光染色。

図4.KI67抗体(カタログ番号:27309-1-AP希釈倍率:1:1000)を使用したパラフィン包埋ヒト扁桃炎組織スライドの免疫組織化学染色(10倍レンズ下)。Tris-EDTAバッファー(pH9)で加熱抗原賦活化を行った。

BrdUとKi67に関するよくある質問

Ki67BrdUのどちらを使用する方が良いですか?

BrdUとKi67は増殖マーカーとして広く使用されており、通常はよく似た発現パターンを示しますが、それぞれ異なる細胞群を染色します。BrdUがS期の細胞を標識するのに対して、Ki67はG1、S、G2、およびM期の細胞を標識します(G0期の細胞だけがKi67に陰性となります)。ただし、1種類のマーカーだけでは一部の情報しか得られないことがあり、両方を使用することによって、得られた結果の信頼性の確保および向上を図ることができます4

細胞増殖アッセイにBrdUKi67を使用する場合、結果の相違をどのように説明すべきですか?

BrdUは、経時的な研究を実施する場合に優れたマーカーであり、DNAの複製と修復時に発現します。Ki67は、G0期以外の細胞を標識します。Ki67は、G1、S、G2、および有糸分裂のすべての細胞増殖段階で厳密に発現され、増殖分画の細胞にはKi67の方が優れたマーカーと考えられています。S期の長さが一定(+/- 8時間)であるのに対して、細胞周期全体の長さは、通常は24時間ですが、数日間に及ぶこともあります。Ki67は、BrdUと比較して、3倍もの細胞を染色することがあります。


参考文献

1. Detecting Hematopoietic Stem Cell Proliferation Using BrdU Incorporation.

2. Ki67 is a promising molecular target in the diagnosis of cancer (review).

3. Calculation of the Ki67 index in pancreatic neuroendocrine tumors: a comparative analysis of four counting methodologies.

4. Accurate determination of S-phase fraction in proliferative cells by dual fluorescence and peroxidase immunohistochemistry with 5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU) and Ki67 antibodies.