組換え抗体(リコンビナント抗体)

抗体は、何十年間にもわたって生物学研究で重要な試薬として利用されています。 近年、科学的再現性に関連する問題をきっかけに、きわめて特異性が高くロット間変動を最小限に抑えた抗体のニーズが高まっています。 そのような特性を持つ抗体製品は、これまでに存在しませんでしたが、近年の分子生物学やスクリーニング技術の進歩により、遺伝子配列が判明している組換え抗体(リコンビナント抗体)の作製が可能になりました。

組換え抗体は、ロット間の変動が少なく特異性が高いことから、従来よりも優れた再現性と信頼性をもたらす次世代の抗体試薬として注目されています。

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組換え抗体(リコンビナント抗体)とは?

組換え抗体を作製する手法は数多く存在します。 プロテインテックの組換え抗体は、免疫動物のB細胞や形質細胞由来の抗体重鎖および軽鎖のDNA配列をin vitroでクローニングすることにより作製されたモノクローナル抗体です。

ハイブリドーマが産生する従来のモノクローナル抗体とは異なり、組換えベクターを発現宿主(例:E. coli)に導入して抗体を産生します。 この組換え技術によって、モノクローナル抗体の性質のばらつきの原因となる遺伝的浮動のリスクが排除され、ロット間変動がほとんど認められなくなります。

Comparison between traditional antibodies and recombinant antibodies

組換え抗体を選ぶ理由とは?

高いロット間一貫性

抗体配列のDNAライブラリーを保存し、その情報を利用して組換え抗体を作製することで、産生抗体の一貫性と信頼性を確保し、遺伝的浮動のリスクを最小限に抑え、一定の品質の抗体を継続的に供給できます。

安定的に供給可能

組換え抗体産生機構の特性上、組換え抗体の産生に要する期間は短く、容易に大規模生産を実施できます。 したがって、製造ロット間の変動がほとんど認められないことに加えて、スケール変更も容易であることから、長期的なプロジェクトや大量に抗体を使用する実験等に最適です。 製造業者はモノクローナル抗体やポリクローナル抗体の製造時、収量が低いという問題に直面することがありますが、組換え技術による製造法を採用するとこうした問題を回避することができます。

高い検出感度と親和性

抗体の遺伝子配列をクローニングしてしまえば、その配列を改変することによって、ターゲットに対してより高い親和性と特異性で結合できる抗体を創出することができます。 また、抗体工学では「キメラ」抗体も作製可能で、抗体のFc領域を異なる動物種のFc領域に入れ替えることもできます。

困難なターゲットにも対応可能

特定のタンパク質アイソフォームやリン酸化タンパク質等のターゲットタンパク質の中には、従来のマウスハイブリドーマの技術では品質と信頼性が高い抗体を得ることが困難な場合があります。 組換え技術によりマウスよりも免疫的多様性が豊かなウサギやラマ等の動物種由来の抗体を取得して改変できることから、難易度の高いターゲットタンパク質に対する特異的な抗体を作製しやすい傾向にあります。

アニマルフリーの生産体制

世界中でアニマルフリーの技術の必要性が高まり、奨励されつつあります。 組換え抗体を生産する場合、一度免疫化を行い抗体のDNA配列をクローニングしてしまえば、動物を必要としなくなります。 このプロセスにより、従来のような免疫原を用意しなくとも抗体を作製することができます。 例えば、プロテインテックの 抗SARS-CoV-2 Sタンパク質組換え抗体 は、回復患者の少量の血清試料に由来する組換え抗体であり、抗体産生に動物を使用していません。

プロテインテックの組換え抗体作製法

プロテインテックでは、ウサギ組換えモノクローナル抗体を作製しています。 ウサギは、進化の過程で発達したエピトープ認識能、多様な抗体産生能、単一のアイソタイプ/サブクラス抗体を産生するといった特徴を持つウサギ本来の免疫応答によって、その他の手法よりも組換え抗体の産生に優れた資質を備えています。

プロテインテックの組換え抗体の作製は、ウサギの免疫化からスタートします。 免疫応答が最も活発になった時に、ウサギの抗原特異的B細胞を独自の技術を使用してシングルセル単位で単離します。 得られたB細胞は、高い親和性と特異性を示す抗体の産生能があるかスクリーニングされます。 その後、選択されたB細胞から抗体重鎖および軽鎖の遺伝子をクローニングして、細胞株中で目的の抗体を発現させます。 これらの抗体は、国際的ワーキンググループ(IWGAV :the International Working Group for Antibody Validation)の特異性、感度、再現性の試験に関する勧告に従い、多岐にわたる検証が実施されます。

Rabbit recombinant monoclonal antibody development process

ChromoTek組換えVHH-IgG Fc融合キメラ抗体

VHH抗体(別名:Nanobody®)は、ラクダ科動物の重鎖抗体に由来する抗原結合ドメインであり、遺伝子工学的にFcドメインを融合してキメラ重鎖抗体を作製することも可能です。 VHH-Fc融合体は、(i)二価の抗体であるため、アビディティ(Avidity:2つ以上または複数の抗原結合部位が標的抗原エピトープと同時に相互作用することによって生じる累積結合強度または機能的親和性)によって、由来とするVHH抗体よりもさらに高い結合力を示し、(ii)従来型抗体では認識できないエピトープの特異的三次元コンホメーションに結合でき、(iii)一般的な二次抗体やNano-secondary®を使用して検出または捕捉することができます。 その他の組換え抗体と同様に、VHH-IgG Fc融合キメラ抗体は、ロット間で高い一貫性を示し、安定的な供給が可能です。 本製品は、ChromoTek(ドイツ、2020年10月よりプロテインテックグループ)とAbsolute Antibody Ltd.社(イギリス)の共同開発製品です。

プロテインテックとChromoTekは、フレキシブルに利用できる、2種類の異なるIgG(ウサギIgGまたはマウスIgG1)のFcドメインを融合したVHH-IgG FC融合キメラ抗体を提供しています。 実績豊富で高い評判を得ているChromoTekのVHH抗体(GFP抗体、mNeonGreen抗体、TurboGFP抗体、ビメンチン抗体)は、ウサギIgG Fc融合またはマウスIgG1 Fc融合キメラ抗体としても利用できます。

製品の特長

  • 2,000以上の文献使用実績がある高い評判のVHH抗体をウサギIgGまたはマウスIgG1のFcドメインに融合
  • 従来型抗体が認識しない特異的エピトープを認識可能
  • 二価構造による優れたアビディティ(結合力/機能的親和性)とシグナル増幅効果
  • 高いロット間一貫性と安定的供給能
  • 組換え抗体として発現および製造
  • 市販されている通常の二次抗体やChromoTekのNano-secondary®で検出可能