特殊なエピトープ結合特性とFcドメイン検出性を組み合わせた代替VHH抗体(Nanobody®)フォーマット
免疫蛍光染色(IF)の新たなマルチツール:キメラ重鎖抗体
重鎖抗体とは?
アルパカ等のラクダ科動物の免疫レパートリーにおける抗体は、IgG1、IgG2、IgG3の3種類で構成されます。IgG1は、2本の重鎖と2本の軽鎖で構成される標準的な従来型のIgG分子である一方、IgG2およびIgG3サブクラスは重鎖抗体(HCAb:heavy chain antibody、heavy chain-only antibody)と呼ばれる軽鎖を伴わない抗体分子です。このような重鎖のみからなる抗体は、ヒンジ領域の違いやCH1ドメインおよび軽鎖が存在しない点から、従来型のIgG分子とは異なる抗体です。
IgG重鎖抗体の抗原結合ドメインは、VHH抗体(別名:Nanobody®)としても知られ、立体構造を維持している、すなわち機能的な活性を維持しているターゲットに対して、高い親和性を示すという独自の結合特性を有します。
Fcドメイン融合VHH抗体を選ぶ利点とは?
現在、ChromoTek(クロモテック)はプロテインテック製品として組換えキメラ抗体を販売しています。この組換えキメラ抗体は、IgG抗体のFcドメインを融合したVHH抗体(Nanobody®)です。つまり、アルパカ由来VHH抗体(Nanobody®)にウサギIgGやマウスIgG1のFcドメインが融合したVHH-IgG Fc融合キメラ抗体です。
製品の特長と利点
- 従来型抗体が認識しない特異的エピトープを認識可能
- 2,000報以上の論文使用実績がある高い評判のVHH抗体(Nanobody®)をウサギIgGまたはマウスIgG1のFcドメインに融合
- 二価構造による優れたアビディティ(結合力/機能的親和性)と良好なシグナル増幅効果
- 市販されている通常の二次抗体やクロモテックのNano-Secondary®で検出可能
- 高いロット間一貫性と安定的供給能
- 組換え抗体として発現および製造
その他の組換え抗体と同様に、VHH-IgG Fc融合キメラ抗体は、ロット間で高い一貫性を示し、安定的な供給が可能です。本製品は、ChromoTek(ドイツ、2020年10月よりプロテインテックグループ)とAbsolute Antibody Ltd.社(イギリス)の共同開発製品です。
VHH-FC融合抗体は、VHH抗体(Nanobody®)と従来型抗体の利点を兼ね備えています。(i)二価の抗体であるため、アビディティ(Avidity:2つ以上または複数の抗原結合部位が標的抗原エピトープと同時に相互作用することによって生じる累積結合強度または機能的親和性)によって、由来とするVHH抗体よりもさらに高い結合力を示し、(ii)従来型抗体では認識できないエピトープの特異的三次元コンホメーションに結合でき、(iii)一般的な二次抗体やNano-secondary®を使用して検出または捕捉することができます。
販売中の組換えVHH-IgG Fc融合キメラ抗体
プロテインテックとChromoTekは、フレキシブルに利用できる、2種類の異なるIgG(ウサギIgGまたはマウスIgG1)のFcドメインを融合したVHH-IgG Fc融合キメラ抗体を提供しています。実績豊富で高い評判を得ているChromoTekのVHH抗体(GFP抗体、mNeonGreen抗体、TurboGFP抗体、ビメンチン抗体)は、ウサギIgG Fc融合キメラ抗体またはマウスIgG1 Fc融合キメラ抗体としても利用できます。組換え抗体に関する詳細はこちらの解説(ptglab.co.jp)をご覧ください。
Lamin-Chromobody®-mNeonGreenを一時的に発現させたHeLa細胞の免疫染色。使用抗体:mNeonGreen VHH-マウスIgG1融合組換え抗体(カタログ番号:nfms、クローン番号:CTK0203、希釈倍率1:500)、Nano Secondary® anti-mouse IgG1 抗体(Alexa Fluor® 647標識)(カタログ番号:sms1AF647-1、希釈倍率1:500)(スケールバー:10µm)
MDCK細胞の免疫染色。使用抗体:Vimentin VHH-ウサギIgG融合組換え抗体(カタログ番号:vfrb、クローン番号:CTK0211、希釈倍率1:1000)、Nano Secondary® anti-human IgG/anti-rabbit抗体(Alexa Fluor® 647標識)(カタログ番号:srbAF647-1、希釈倍率1:1000)(スケールバー:10µm)