面接対策・方法(海外)—アカデミア・企業—
ヨーロッパのアカデミアや企業でキャリアを築いている、生命科学分野の専門家からのアドバイスに基づき、面接へ向けた最善の準備方法について解説します。
プロテインテックは、アカデミアと企業のそれぞれでキャリアを築いている専門家を招待し、面接を成功させる方法に関するウェビナーを開催しました。
※本稿では、以下の英文記事を日本語訳して掲載しています。
https://www.ptglab.com/news/blog/how-to-succeed-in-an-interview-academia-vs-industry/
Charlie Arber博士—英国アルツハイマー協会リサーチフェロー(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、UCLクイーンスクエア神経学研究所、英国) Arber博士は、2012年にインペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)で幹細胞神経発生学の博士号を取得しました。その後、ポスドク(博士研究員)としてユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに所属しました。2019年に、権威ある英国アルツハイマー協会フェローシップの資格を獲得し、以来、UCLクイーンスクエア神経学研究所で幹細胞を用いた神経変性疾患モデルの研究に従事しています。 |
Frank Schestag博士—Proteintech Group, Inc.(プロテインテック)欧州担当コマーシャルディレクター 2000年、クリスティアン・アルブレヒト大学キール(ドイツ)にて生化学の博士号を取得しました。その後、Fermantas社に入社しキャリアを積み、欧州部門のセールスリーダーに就任しました。Thermo Fisher社によるFermantas社買収後は、サイトリーダーとしてキャリアを重ね、最終的にシニアコマーシャルマネージャーへの昇進を経験しました。2019年、プロテインテックに入社し、以後、欧州におけるプロテインテックの驚異的な成長を主導しています。 |
アカデミアと企業における面接プロセスの経験者として、Arber博士とFrank 博士の2人に面接を成功させるための重要なヒントを共有してもらいました。
ウェビナーに参加できなかった方もご安心ください。両名のアドバイスに基づき、アカデミアや企業のポジションに応募する場合に役立つガイドを以下に整理してまとめました。
アカデミアでキャリアを進める場合
ポスドク(博士研究員)やフェローシップ(特別研究員)職を採用するためのアカデミアの面接には決まった形式があります。面接全般で言えることですが、自信をもって面接に臨んでいる印象を面接官に与えることが重要です。そのため、あらかじめ形式が判明している面接では、本番で自信をもって面接に臨めるように、当日までできる限りの準備をしましょう。
アカデミアの面接形式
ポジション
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ポスドク
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フェローシップ
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パネル面接 |
面接官:3名程度 |
面接官:最大8名程度 |
プレゼンテーション |
これまでの研究 |
研究プロジェクト |
質問・ディスカッション |
一般的な決められた形式の質問(General set questions) |
プロジェクト固有の技術的な質問や全体像に関する質問(Project-specific technical and big-picture questions) |
特にポスドクの面接終了後、ラボ見学ツアーに招待される場合があります—これは、応募者がラボの主宰者やメンバーに質問をしたり、ラボが自分に合っているかどうかを見極める重要な機会です。
アカデミアの面接で成功するためのアドバイス(Charlie Arber博士)
「Control the controllables」—コントロールできることをコントロールする―
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ご自身の研究のプレゼンテーションや、フェローシップのプロジェクトに関するプレゼンテーションは、入念に準備をしておくことが可能です。話す内容を暗記しておくこともできるでしょう。ぜひ友人、家族、同僚に声をかけて練習してみましょう。練習を重ねてから本番に臨めば、力強く自信に満ちた調子で面接を始めることができ、最後まで一貫したトーンを維持できるはずです。
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ポスドク:面接官は応募者すべてに質問を用意する必要があるため、質問内容は比較的一般的な事柄になる傾向にあります。そのため、応募者は回答内容を事前に準備しておくことができます。
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ポスドク:応募する職務やラボについて、できる限り多くのことを把握しておきましょう。例えば、過去の論文や共同研究について調査します。事前調査をしておくことによって、応募する職務やグループに対して強く関心を持っている印象を面接官に与えることにもつながります。
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フェローシップ:面接官のメンバーが関心のある分野や研究業績を事前に調べておきましょう。
企業に応募する場合
企業の面接は、応募する職務・職位や面接官によって、より多様な面接形式をとる傾向にあります。厳密な形式は決まっていないものの、面接を成功させるために準備できることはたくさんあります。
まずは以下の項目について調査しましょう
会社:企業理念(mission statement)や価値(value)、企業風土、ニュース、売上、市場における位置付け、製品ポートフォリオ、会社が持つ独自の強み(USP)、製品等について調査します。
面接官:企業面接の場合、業務上のラインマネージャーではなく、最初に人事部の人員が面接を担当する可能性があります。そのため、応募する会社の面接相手が誰であるかを調査しましょう。ビジネス向けSNSであるLinkedIn(リンクトイン)は、様々な産業に携わる人々によく利用されており、こうした調査に最適なツールです。
Frank博士からのヒント:ご自身のLinkedInのプロフィール欄は、会社に提出する「オンライン版」の英文履歴書(CV:curriculum vitae)のように扱いましょう。CV的に記載されていない場合は、削除しておく方が良いかもしれません。相手があなたに関心を持っていれば、プロフィールを探すはずです。プロフィールは、自分自身を最も良く反映したものが望ましいでしょう。
会社・面接官への質問の準備:面接官はあなたからの質問も期待しています。そのための準備を整えておきましょう。相手からの質問に答えるのと同じくらい、よく考えた適切な質問を自分自身からすることは重要です。面接官に良い質問をすることによって、あなたがこの募集に強い関心を持ち、担当する職務・役割を理解していることを伝えることにつながります。例えば、以下の質問を事前に準備しておきましょう。
ポジション(The position)
会社とビジョン(The company and their vision)
キャリアの進展(Career progression)
自己啓発/成長目標/人材開発(Personal development)
研修(Training)
面接官の質問に端的に回答するテクニック
面接では、できる限り多くの情報を伝えたいと思うあまり、長くて要領を得ない回答をしてしまうことがあります。「STAR」メソッドや「PPP」のフォーマットを活用した面接対策は、明瞭かつ簡潔な回答に役立ちます。「STAR」メソッドや「PPP」のフォーマットを利用した面接対策は、明瞭かつ簡潔な回答に役立ちます。
簡潔に回答したい時
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自分を売り込みたい時
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S – Situation(状況) T – Task(課題) A – Action(行動) R – Result(結果) |
P – Person(人) P – Place(場所) P – Project/Position(プロジェクト/ポジション) |
「STAR(Situation、Task、Action、Result)」や「PPP(Person、Place、Project/Position)」フォーマットを活用して、よくある質問に回答する練習をしてみましょう。本番では、面接のために十分な準備をしてきたような印象を与えることができるでしょう。さらに、フォーマットを浮かべながら答えることで、焦らず、緊張を緩和する効果もあるかもしれません。
一般的な面接の質問
何回か面接を経験すると、同じような質問が登場することに気づくでしょう。よくある質問に対しては、簡潔に答えることができるように「STAR(Situation、Task、Action、Result)」フォーマットで回答を準備しておきましょう。「STAR」の各項目を箇条書きにして、自分の回答を考えます。スムーズな受け答えになるよう心掛けつつ、リハーサルしすぎているような印象を与えないように、質問に対して丁寧かつ確実に答えるようにしましょう。
アカデミア
- プロジェクトに関する質問(Project-specific questions)
- 問題を克服した時の経験(A situation where you overcame a problem)
企業
- アカデミアを離れる理由は?(Why are you leaving academia?)
- この会社で働きたい理由は?(Why do you want to work at this company?)
- あなたにとって重要なこととは?(What is important to you?)
- 難しい顧客にはどのように対処しますか?(How would you deal with a difficult customer?)
アカデミア&企業
- あなたの長所と短所は何ですか?(What are your strengths and weakness?)
- 5年後の自分はどうなっていると思いますか?(Where do you see yourself in 5 years?)
- 自分がこの仕事に適していると思う理由は?(Why are you the right person for this job?)
面接や応募に関するFAQ
- 面接で技術的スキル(ラボスキル)以外のスキルをアピールできるでしょうか?―特に、職務記述書(job description)の基準を全て満たしていないのに面接に呼ばれた場合は?
あなたは博士課程の間に、レジリエンス(resilience)、トラブルシューティング(troubleshooting)、チームワーク(teamwork)、リーダーシップ(leadership)、プロジェクト管理(project management)、粘り強さ(tenacity)、コミュニケーション能力(communication)等の、様々な場所で活用できる「トランスファラブルスキル(Transferable Skills)」を習得しています。これらのスキルの披露を敬遠する必要はありません。採用側は、技術的スキルと同じくらいに「トランスファラブルスキル」も重要視しています。場合によっては、技術的スキルよりも重要であることもあります。大前提として、すべての基準を満たす「完璧な応募者」は存在しないことを心に留めておきましょう。面接は、あなたが職務に相応しいかどうかを判断する場です。あなたのこれまでの経験から、素早く学習・習得して、環境に適応してきた状況を述べることで、同様の方法でこれからの仕事でも役割を果たすことができることを説明できます。
- 研究業績を発表した論文が少ない場合はどうすればよいですか?
アカデミア:研究実績を掲載した論文の著者資格を取得した上で、将来的に掲載されるはずの研究について話しましょう。プロジェクトの中には論文掲載できない理由を解決する作業に数年を要するものがあり、発表論文数が限られてしまう場合があることをアカデミアの人々はよく理解しています。
企業:それほど問題にされません。人脈形成(networking)やチーム作り(team building)等の企業でも通用するトランスファラブルスキルを積極的にアピールしましょう。
- 自分の短所を効果的に伝えるにはどうすればよいですか?
短所や弱みに関する質問は、面接時に聞かれることが多く、即興で回答するのが困難な場合もあります。そのため事前に準備しておくことが賢明です。これまでの経験や体験した状況をあなたの短所や弱みに当てはめつつ、前向きな内容に転換してみましょう。例えば、「私はノーと言うのが苦手なため、仕事の負担が大きくなってしまうことがありました。しかし、それは多くの共同プロジェクトに関与して、幅広い人脈を築いてきたということです(I am not good at saying no, which can overload my work, but it does mean I have been involved in many collaborative projects and I have extensively networked.)」のような回答に工夫します。また、短所を改善するためにどのような取り組みを行っているかについて言及することも有効です。
- 質問に簡潔に回答する方法を教えてください
「STAR(Situation、Task、Action、Result)」メソッドを参考にして、要点を効率的に伝えましょう。最大で3~4文に抑えると良いでしょう。
- 博士課程の指導教官から適切な推薦状(紹介状)を得られない場合はどうすればよいですか?
あなたのことを好意的に紹介する推薦状(reference)を、様々な人から代わりに書いてもらいましょう。推薦状について過度に心配する必要はありません。通常、推薦状は一連のプロセスの最終段階で必要になることが多く、面接が終了してから参照されます。優秀なアカデミアの研究者が企業におけるマネジメントに優れているとは限らないため、面接時の成績の方が優先され、推薦状はあまり重視されないことも多くあります。また、国によっては否定的な内容の推薦状を書くことが違法となる場合もあります。推薦状は多くの場合、純粋な事実に基づいて作成され、あなたの職務や携わった期間に関する詳細が記載されます。
- ポスドクを10年間続けた後でも企業に応募できますか?
もちろん可能です。正しい選択であると思えるなら、遅すぎるということはありません。転職しても通用する「トランスファラブルスキル」を披露しつつ、培った専門知識をアピールしましょう。例えば、テクニカルサポートの場合、豊富なラボ経験を活かして、お客様によってそれぞれ異なる実験に関する問い合わせに適切に対処できるはずです。また、バイオテクノロジー企業では、ご自身が顧客であった立場から、マーケティングに関して多くの有益な情報を提供・提案することを期待されるでしょう。
面接を成功させる最後のアドバイス
面接を成功させるために覚えておくことが1つあるとすれば「しっかり準備することが大切である」ということです。
アカデミアか企業かを問わず、Charlie Arber博士もFrank Schestag博士も、面接で成功する人は次のような人物であるという点で意見が一致しています。
- 募集されているポジションに関する知識がある(Knowledgeable about the position)
- 面接の準備ができている(Prepared)
- 正直かつ誠実(Honest and genuine)
- 友好的かつ人柄が良い(Friendly and personable)
- 面接の質疑応答で適切な質問をする準備ができている(Ready to ask relevant follow-up questions)
Lucie Reboud著(マンチェスター大学博士課程在籍(がん領域)、プロテインテック インターン生)