ALS・前頭側頭型認知症治療の新たな手段?典型的m6A readerが示す新規治療ターゲットとしての可能性
Michael McMillan著(QurAlis社Scientist I)
Molecular Cell誌に掲載された「RNA methylation influences TDP43 binding and disease pathogenesis in models of amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia」の筆頭著者であるMcMillan博士が本論文のハイライトを紹介します。
プロテインテックはALS研究に高い関心を寄せ、高品質な製品の提供を通じて研究活動の支援に取り組んでいます。プロテインテック製品ユーザーであるMichael McMillan博士は、筆頭著者として携わった2023年Molecular Cell誌に掲載された論文(PMID:36634675)の中で、プロテインテック製品であるTDP-43抗体(カタログ番号:10782-2-AP)・YTHDF2抗体(カタログ番号:24744-1-AP)を解析に使用しています。極めて詳細かつ示唆に富む本論文では、典型的m6A reader(修飾読み取り)タンパク質であるYTHDF2によるTDP-43のRNA結合能の制御機構が実証され、一連の機構がALSの新たな治療ターゲットとなり得る可能性を明示しています。
McMillan博士はこの研究をSami Barmada博士の指導のもと、Michigan大学で実施しました。現在、McMillan博士はQurAlis社のScientist Iの研究員として研究に従事しており、ご自身の画期的な研究成果を紹介するブログの執筆を快諾してくださいました。
![]() McMillan et al., 2023.(Molecular Cell誌)より |
ALS病態形成におけるRNAメチル化の役割を探る
筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic lateral sclerosis)は進行性の神経変性疾患であり、近年の研究の進展にもかかわらず病態機構の大半は未解明のままで、有効な治療の選択肢も限定的です。ALS患者は臨床的・生化学的・遺伝的に多様な特徴を示し、患者ごとに異なる病態背景がALSに対する効果的な治療アプローチの確立を阻む一因となっています。とはいえ、ALS症例のおよそ95%にRNA結合タンパク質であるTDP-43(TAR DNA-binding protein of 43 kDa)で構成される細胞質内封入体が認められます。TDP-43はRNAのスプライシング・輸送・翻訳とその安定性維持に必要不可欠な機能を担うタンパク質です。所属研究室で過去に取得されたデータは、TDP-43はリボソームタンパク質や酸化的リン酸化に関与する酵素類をコードする転写産物を選択的に不安定化することを示唆しています(PMID:30030424)。また、RNAのN6-メチルアデノシン(m6A)修飾に関与するRNAメチルトランスフェラーゼをノックダウンした場合も、同一の転写産物の発現上昇が認められます。TDP-43とm6A修飾経路に関連する因子とが相互作用するというエビデンスをもとに、我々はTDP-43がRNA転写産物上のm6Aを識別し、特定の転写産物を選択的に標的化して制御しているという仮説を導き出しました。
TDP-43によるm6Aメチル化修飾RNAの認識
ヒト脳組織のデータセットを用いたバイオインフォマティクス解析により、m6A修飾部位の上流に存在するTDP-43結合モチーフの出現頻度が若干ではあるものの有意に上昇していることが明らかになり、TDP-43の結合挙動がm6A修飾の存在によって影響を受ける可能性が示唆されました。そこで、TDP-43がm6Aメチル化転写産物に結合するのか検証するため、DART-seqを実施しました。DART-seqはm6A抗体を用いずにm6A領域を高精度に検出できる手法です。本研究では、内在性のHaloタグ標識TDP-43をプルダウン・精製する手法を組み合わせることで、細胞からTDP-43に結合するRNA転写産物を回収し、その配列を解読してm6A修飾部位を同定しました。その結果、TDP-43が結合しないコントロール転写産物群と比較して、TDP-43が結合する転写産物にm6Aが高頻度に存在することが示されるとともに、TDP-43をコードするTARDBP遺伝子の転写産物の既知の結合領域にもm6A部位が存在することを発見しました。TARDBPのRNAメチル化領域に部位特異的変異を導入したミニジーンレポーターアッセイによる追加検証実験では、m6AはTDP-43の標的RNA認識に極めて重要な役割を果たすことが示されました。
YTHDF2発現抑制はALS脊髄中のRNA過剰メチル化に起因する細胞毒性を緩和する
この得られた結果に加え、TDP-43のRNA結合とm6Aの関係を示唆する過去のエビデンスから、孤発性ALS(sALS:sporadic ALS)の病態下においてm6A修飾の制御不全が生じているのか否かという疑問が浮上しました。そこで、sALS患者と健常人の脊髄組織から得られたRNAを用いてm6Aアレイを実施し、両群のm6Aレベルを測定したところ、sALSサンプルにおいて顕著なRNAの過剰メチル化が認められました。ALS患者脊髄中の過剰なRNAメチル化が明らかになったことで、RNAメチル化がTDP-43依存的な細胞毒性に影響を及ぼすのか否かという疑問が新たに生じました。この観点から、TDP-43の毒性に対するRNAメチル化の影響を評価するために、m6Aに関連するwriter(修飾付加)・eraser(修飾除去)・reader(修飾読み取り)タンパク質をスクリーニングし、CRISPR-Cas9によって各因子の発現を制御しTDP-43過剰発現モデルの生存状態を追跡できる実験系を構築しました。m6Aのwriter・eraser・readerを個別にノックアウトすると、ラット神経細胞の生存状態に様々な影響が生じましたが、m6A readerであるYthdf2遺伝子をノックアウトした場合のみTDP-43依存的毒性が低減しました。この効果はALSモデルのヒトiPS細胞を用いた実験でも認められ、YTHDF2遺伝子をノックダウンすることで神経細胞の生存期間が延長しました。反対に、神経細胞にYTHDF2を過剰発現させると細胞の生存期間は短縮しました。また、sALS脊髄組織の免疫組織化学染色(IHC)では、sALS脊髄中のYTHDF2タンパク質の存在量が正常な対照群よりも増加していることが示されました。
結論と今後の展望
これらの発見は、ALSの病態にm6A修飾異常が関与することを示唆しています。m6A修飾の主な作用は特定のRNA転写産物の安定性低下であることから、本研究はALSに認められるRNA不安定化の機構の一端を特定したといえます。ALS患者の脊髄に認められるYTHDF2の発現増加は、局在異常をきたしたTDP-43と連動して細胞毒性を引き起こしている可能性があります。この推論は、複数のALSモデル神経細胞においてYTHDF2を枯渇させると細胞の生存期間が延長することや、YTHDF2を過剰発現させることで細胞死に至るリスクが増加することを示すデータによって裏付けられています。RNA分解経路との関わりや本論文で示されたデータから、m6A修飾がALSに関与する非常に興味深い新規経路であること、そしてYTHDF2が新たなALS治療法確立のための有望な創薬ターゲットであることが示されています。
m6A修飾認識抗体&関連製品
m6A修飾認識抗体
m6Aモノクローナル抗体
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m6A IHCeasy Kit
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m6A修飾関連製品
m6A Writer |
m6A Reader |
m6A Eraser |
TDP-43関連抗体&関連製品
プロテインテックのTDP-43ポリクローナル抗体(カタログ番号:10782-2-AP)は、TDP-43タンパク質が神経変性疾患における病理的封入体の主要構成成分であることを明らかにした論文(Neumann et al. 2006)で解析ツールとして重要な役割を果たしました。プロテインテックの実践する全長タンパク質を免疫原として用いる開発戦略は、多様な疾患・病態下における凝集TDP-43の検出を可能にします。
現在、プロテインテックのTDP-43関連製品は2500報以上の論文で引用されています。病態を示すTDP-43のC末端フラグメント・リン酸化TDP-43をはじめ、様々な状態で存在するTDP-43をターゲットとする多岐にわたる製品を開発・販売しています。
ターゲット |
カタログ番号 |
タイプ |
アプリケーション |
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TDP-43 |
Rabbit Polyclonal |
WB, IHC, IF/ICC, IF-Fro, FC (Intra), IP, CoIP, ChIP, RIP, ELISA, IEM |
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TDP-43 (C-terminal) |
Rabbit Polyclonal |
WB, IHC, IF/ICC, IF-Fro, FC (Intra), IP, CoIP, chIP, RIP, ELISA |
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TDP-43 |
Rabbit Polyclonal |
WB, IHC, IF/ICC, FC (Intra), IP, RIP, ELISA |
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Phospho-TDP43 (Ser409/410) |
Rabbit Polyclonal |
WB, IHC, IF, IP, ELISA |
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TDP-43 (human specific) |
Mouse Monoclonal |
WB, IHC, IP, CoIP, RIP, ELISA |
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Phospho-TDP43 (Ser403/404) |
Mouse Monoclonal |
WB, IHC, IF, ELISA |
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Phospho-TDP43 (Ser409/410) |
Mouse Monoclonal |
WB, IHC, IF, ELISA |
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TDP-43 |
Mouse Monoclonal |
WB, IHC, ELISA |
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TDP-43 (C-terminal) |
Mouse Monoclonal |
WB, IHC, IF/ICC, IF-P, ELISA |
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TDP-43 (N-terminal) |
Rabbit Recombinant |
WB, IHC, IF-P, FC (Intra), IP, ELISA |
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TDP-43 (N-terminal) |
Rabbit Recombinant |
WB, IHC, IHC-Autostainer, IF/ICC, IF-P, FC (Intra), IP, ELISA, ChIP-qPCR |
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Phospho-TDP43 (Ser409/410) |
Rabbit Recombinant |
WB, IHC, IF/ICC, ELISA |
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TDP-43 |
Rabbit Polyclonal |
IF/ICC, FC (Intra) |
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TDP-43 (C-terminal) |
Rabbit Polyclonal |
FC (Intra), IF |
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TDP-43 (C-terminal) |
Mouse Monoclonal |
IF-P |
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TDP-43 (for IF/FC) |
Rabbit Recombinant |
IF/ICC |
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TDP-43 (C-terminal) |
Rabbit Polyclonal |
IF/ICC, FC (Intra) |
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TDP-43 (C-terminal) |
Mouse Monoclonal |
IF-P |
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TDP-43 (for IF/FC) |
Rabbit Recombinant |
IF/ICC |
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Human TDP-43 ELISA kit |
Mix |
ELISA (Serum, Plasma) |
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Human TDP-43 ELISA kit |
Mix |
ELISA |


