重要な血清学:COVID-19抗体検査について理解する

COVID-19抗体検査について解説します。

COVID-19が米国で広がっていることから、政策当局者や、元FDA長官のScott Gottlieb氏をはじめとする公衆衛生の専門家は、アウトブレイクを追跡・管理するための検査を増やすよう呼びかけています(参考記事:Washington Post)。急性感染症に対するRT-PCR検査の拡充に加えて、どのような人物が将来的なSARS-CoV-2感染症に対する免疫を獲得した可能性があるかを評価する血清学的検査の必要性が挙げられます。こうした検査では、コロナウイルスタンパク質を「ベイト」として使用し、SARS-CoV-2に対する中和抗体を持つ人々を同定します。
何百もの企業が様々な品質の血清学検査用製品を開発していますが(参考記事:Fierce Biotech)、FDAは最近、12の製品のパフォーマンスデータを発表しました(参考資料:FDA)。このFDA資料には多くの種類の検査製品が挙げられていますが、これらはどのように機能するのでしょうか?また、それぞれの検査にはどのような制限があるのでしょうか?

主なCOVID-19抗体検査の種類

タイプ 利点 欠点
ELISA

-新しい技術よりも開発が簡単

-診断法として定評がある

-感度が低い

-遅い

-低スループット

CMIA

-感度が高い

-バックグラウンドが低い

-自動化可能かつハイスループット

-迅速に結果が出る

-偽陽性率が高い
Lateral Flow

-実施と判定が簡単

-室温での安定性

-偽陽性/陰性率が高い

-定量的ではなく定性的

ELISA抗体検査法によるCOVID-19の検出

ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)は、サンプル中の分析物を定量するための最も簡単な技術です。ELISAは一般的に、捕捉剤でコーティングされた96ウェルプレートを使用します。ほとんどの場合、分析対象物に対するポリクローナル抗体を捕捉剤として使用します。COVID-19血清学検査では、組換えウイルスタンパク質のフラグメントか完全な組換えウイルスタンパク質を使用しています。検体をインキュベートすると、捕捉剤が分析対象物に結合し、検体から分析対象物を単離します。洗浄して不要な分子を除去した後、検出剤を添加します。検出剤は、一般的に分析対象物に対するモノクローナル抗体で、西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素が結合しています。COVID-19血清学検査では、別の組換えタンパク質や、酵素標識抗イムノグロブリン抗体等を使用できます。酵素の基質を添加することで、基質量に比例した発色シグナルが得られ、定量が可能になります。
この手法は比較的古い技術であるため、開発や品質管理のためのプロトコールが確立されていることが大きなメリットです。また、医学的診断にもよく使われる手法であるため、ほとんどの臨床検査室で利用することができます。
しかし、ELISAは、新しい技術に比べて感度が低い傾向にあります。また、手作業をしなければならず、多大な時間投資も必要です。その結果、低スループットとなります。
市販されている例としては、Bio-Rad社のPlatelia SARS-CoV-2 Total Abがあり、これはヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体を検査するものです。この検査では、組換えヌクレオカプシドでコーティングされたプレートを使用し、ペルオキシダーゼが結合した組換えヌクレオカプシドを検出剤として使用します。最もパフォーマンス性が高い血清学検査の1つとして、CLIA(化学発光免疫アッセイ)が挙げられます。その測定原理はELISAと非常によく似ていますが、測定に発色反応ではなく化学発光反応を使用します。化学発光系は、発色系に比べて高いダイナミックレンジと高い感度を有しています(PMID:20201791)。

CMIAによるCOVID-19抗体検査

血清学検査のもう1つの方法として、CMIA(化学発光微粒子免疫測定法)があります。この測定法では、捕捉剤はプレート上にコーティングされるのではなく、常磁性微粒子と結合しています。洗浄後、化学発光性標識体が結合した検出剤を添加します。免疫複合体を形成させ、洗浄した後、化学発光性標識体の別の構成成分を添加し、得られたシグナルを読み取って定量に使用します。
この方法には、ELISAよりも優れた点がいくつかあります。第一に、微粒子と結合するための表面積がマイクロプレートウェルよりも大きいことから、ELISAよりも高感度です。第二に、バックグラウンドが低い点です。粒子は常磁性微粒子であるため、磁場の印加により検体中の不要分子から免疫複合体を効率的に単離することができます。第三に、検査全体を自動化することができ、ELISAよりもインキュベーションの時間が短いという点が挙げられます。
残念ながら、感度が高くなると偽陽性の確率が高くなり、特定の状況下ではこの手法の問題となることがあります(PMID:28614239)。

COVID-19抗体のラテラルフロー(Lateral Flow)検査法

ララテラルフロー測定法は、クロマトグラフィー検査です。この測定法では、簡単にYES/NOの判定ができる特殊なストリップにサンプルを通過させます。検体は最初に蛍光色素や金、その他タグを標識したベイトを含むコンジュゲートパッドを通過します。その後、生じた免疫複合体は、それらを固定化する捕捉抗体のラインを通過します。1つのラインでの免疫複合体の濃縮により、読み取り可能な信号が生じます。残りの検体は、その後最後の抗体ラインを通過し、内部陽性コントロールとなります。
この検査の大きな利点は、簡便性です。判定方法によっては、自宅や看護現場でも使用できる場合があります。さらに、ラテラルフロー検査は室温でも問題なく測定できる場合が多くあります。
この簡便性は、諸刃の剣です。現時点では、中和抗体の存在を合理的に断定できる結合の程度は決められていません。これにより、ラテラルフロー検査は偽陽性や偽陰性が生じやすい傾向があります。
ラテラルフロー測定タイプの一例として、Cellex社のqSARS-CoV-2 IgG/IgM Rapid Testが挙げられます。このコンジュゲートパッドには、金コロイドが結合した組換えスパイクタンパク質と組換えヌクレオカプシドタンパク質が含まれています。この検査では、捕捉抗体を2セット使用しています。第1のセットはIgG抗体であり、第2のセットはIgM抗体です。金コロイド結合組換えタンパク質と結合した中和抗体は、捕捉抗体ラインで固定化・濃縮されると赤紫色を呈します。

プロテインテックのIgG/IgM/IgA抗体

血清学検査の多くは、大規模生産が容易で多様な抗体-抗原結合物を特定できることから検出剤として免疫グロブリン抗体を使用しています。

プロテインテックでは、IgG/IgM/IgA抗体をバルクサイズで提供することができ、キャリアフリーの場合はコンジュゲートやプレートのコーティングに使用できます。

プロテインテックのIgM、IgA、IgGポートフォリオ

カタログ番号 製品名 アプリケーション 反応種
60099-1-Ig Human IgA Monoclonal Antibody WB, IHC, IF, ELISA ヒト
66484-1-Ig human IgM Monoclonal antibody WB, IHC, IF, ELISA ヒト
CL488-66484 CL488-human IgM Monoclonal antibody WB, IF ヒト
CL594-66484 CL594-human IgM Monoclonal antibody IF ヒト
11016-1-AP human IgM Polyclonal antibody WB, IHC, ELISA ヒト
10284-1-AP Rabbit Anti-Human IgG WB, IP, IHC, IF, CoIP, ChIP, ELISA ヒト
HRP-66484 HRP-Conjugated Human IgM Antibody WB ヒト

プロテインテックはカスタム抗体およびバルク製品に対応します(自由自在 カスタムメニュー)。
問い合わせフォームからご希望のカスタム内容をお問い合わせください。