特集 : Tubulin

チューブリン・コードの解明: 細胞および微小管における多様性


チューブリンスーパーファミリーは、真核生物において広く発現される分子であり、細胞分裂、細胞運動、細胞内輸送に関わる細胞骨格の一つである微小管の主要成分を構成します(1)。

また、チューブリンは生体内での研究対象とされる他に、チューブリンの一つであるα-チューブリンは、偏在的でかつ高い発現パターンを示すため、ウェスタンブロッティング実験における内部コントロールとして様々な分野で使用されます(図 1)。

 alpha-tubulin 抗体のウェスタンブロット検証

図 1. 複数の細胞株および組織ライセート中のalpha-tubulin ウェスタンブロット解析。alpha-tubulin 抗体(カタログ番号:66031-1-Ig、1:10000 希釈) を使用した。

哺乳動物のβ-チューブリンには、7つのアイソタイプがあり、βII(TUBB2)、βII(TUBB2A、TUBB2B)、βIII(TUBB3)、βIVa(TUBB4)、βIVb(TUBB2C)、βV(TUBB6)、βVI(TUBB1) を含みます。βIIIおよびβVチューブリンは、強い細胞発現/分布パターンを示します。βIIIチューブリンは、すべての発生段階における中枢神経系および末梢神経系のニューロンで発現するため、有用な神経細胞マーカーとされています(図 2)(2)。βVチューブリンの大部分は、繊毛構造で発現し、その発現パターンの変化(例えば、びまん性の発現パターン)は癌マーカーとなり得ます(図3)(3)。.

 TUBB3-specific 抗体の免疫組織化学染色検証

図 2. TUBB3-specific 抗体(カタログ番号:66375-1-Ig、希釈倍率 1:400、ヒト小脳組織スライド (パラフィン包埋切片) の免疫組織化学染色 (40X)。

 ARL13B 抗体とTubulin beta class V 抗体の免疫蛍光染色検証

図 3. 繊毛マーカー ARL13B 抗体 (カタログ番号: 17711-1-AP) およびTubulin beta class V 抗体 (カタログ番号: 66362-1-Ig) を用いた、MDCK細胞の免疫蛍光染色。

γ-チューブリン(図 4) は高度に保存されたタンパク質であり、微小管重合の核形成において主要な役割を果たし、in vivo で微小管の核形成に必要とされます(4)。

 gamma-tubulin 抗体の免疫蛍光染色検証

図 4. gamma-tubulin 抗体 (カタログ番号: 15176-1-AP) を用いた、hTERT-RPE 細胞の免疫蛍光染色(by Moshe Kim, laboratory of Dr. William S Trimble, University of Toronto)。

チューブリンおよび微小管は、様々な翻訳後修飾を受けることが知られています。翻訳後修飾が微小管の機能や特性を決定する際に果たす役割の解明は、現在重要な研究課題とされています(5)。α-チューブリンのN末端ドメインにある lysine-40 で起こるアセチル化は、微小管安定性、細胞運動性、軸索再生の調節に関与します。最近の研究では、アセチル化α-チューブリンは、繊毛に富んでおり、一次繊毛(脊椎動物のほぼすべての細胞型の表面上の毛様のオルガネラ)のマーカーとして広く使用されています(図 5)。

IFT88抗体とacetylated Tubulin抗体の免疫蛍光染色検証

図 5. IFT88 ウサギポリクローナル抗体 (カタログ番号 : 13967-1-AP、希釈倍率 1:50) およびアセチル化チューブリンマウスモノクローナル抗体 (カタログ番号 : 66200-1-Ig、希釈倍率 1:50) を用いた、MDCK細胞の免疫蛍光染色。二次抗体はAlexa Fluor 594-conjugated AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG (H+L) (IFT88 : 13967-1-AP) 、Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat anti-Mouse IgG (H+L) (アセチル化チューブリン : 66200-1-Ig)を用いた。

各修飾が細胞機能にどのように影響するかを解明することは、依然として大きな課題であり、健康や病因の理解に重要な知見を与えます。アルツハイマー病(AD)において、微小管結合タンパク質(microtubule-associated protein) であるタウの過剰リン酸化は、微小管の不安定化および細胞骨格異常をもたらします。近年の研究から、アルツハイマー病ではチューブリンの翻訳後修飾レベルが増加していることが明らかにされており、微小管の安定性および機能に対するタウの影響を緩和する方法として、翻訳後修飾を標的とする可能性が示唆されています(6)。さらなる研究は、アルツハイマー病の新規治療や診断方法の発見につながる可能性があります。

関連製品

抗体名 カタログ番号 アプリケーション 使用文献
alpha Tubulin 66031-1-Ig ELISA, WB, IP, IHC, IF, FC, CoIP 33
  11224-1-AP ELISA, WB, IP, IHC, IF, FC, CoIP 63
  HRP-66031 WB, CoIP -
       
acetylated Tubulin (Lys40) 66200-1-Ig ELISA,WB,IHC,IF 4
beta Tubulin 10094-1-AP ELISA, WB, IP, IHC, IF, FC, CoIP 26
  10068-1-AP ELISA, WB, IP, IHC, IF, FC 18
  66240-1-Ig ELISA, WB, IP, IHC, IF 3
       
TUBB3-Specific 66375-1-Ig ELISA, WB, IHC, IF, FC -
Tubulin beta class V 66362-1-Ig ELISA, WB, IHC, IF -
gamma Tubulin 15176-1-AP ELISA, WB, IP, IHC, IF, FC 1
  26195-1-AP ELISA, WB, IF -
  66320-1-Ig ELISA, WB, IHC, IF, FC -

参考文献

  1. Tubulin Isotypes: Generation of Diversity in Cells and Microtubular Organelles
  2. Microtubule-Associated Proteins as Indicators of Differentiation and the Functional State of Nerve Cells
  3. Microtubule-binding agents: a dynamic field of cancer therapeutics
  4. The Role of γ-Tubulin in Centrosomal Microtubule Organization
  5. Post-translational modifications of tubulin: pathways to functional diversity of microtubules.
  6. Posttranslational modifications of α-tubulin in alzheimer disease