特集 : Beclin 1 (Atg6)
オートファジー関連タンパク質について解説します。
Beclin 1は、ATG6 または VPS30 としても知られるオートファジー誘導に関連するタンパク質です。Beclin 1は、様々な補因子 (例えば、Ambra1、Barkor (Atg14)、Rubicon、UVRAG 等)と相互作用して複合体を形成します。形成される複合体は、脂質キナーゼVps34を調節し、さらにBECLIN1-Vps34-Vps15複合体となり、オートファジーを誘導します。一方、その複合体の形成は、BH3ドメインを介した Bcl-2またはBcl-XL の結合によって阻害されます。
Beclin 1は、アポトーシスとオートファジーとの間のクロストークにおいての役割も果たし、神経変性および癌 (腫瘍形成) を含む多くの疾患に関連します。 Beclin 1は哺乳類の腫瘍抑制因子であり、その遺伝子は卵巣癌の75%、乳癌の50%、前立腺癌の40%において欠損していることが報告されています。 Beclin1の発現の減少は、ヒトの脳および肺の腫瘍においても観察されます。Beclin1の発現レベルの低下が、アルツハイマー病患者の脳領域において疾患過程の早い段階でみられます。Beclin1の欠損は、神経のオートファジーを妨げ、APP (アミロイドβ前駆タンパク質)代謝を調節し、神経変性を促進します。最新の研究では、Beclin 1機能の獲得・欠損は、心臓細胞死に影響することも示されています。
Beclin 1は、癌、神経変性疾患、心臓病の効果的な治療法のための有望な標的マーカーとして期待されます。