特集:腎臓がん研究・解析
プロテインテックは腎臓がんの研究や解析に有用な抗体、免疫組織化学(IHC)キットを数多く取り揃えています。
はじめに
米国では、腎臓がんは毎年8番目前後に多く発生するがんであり、年間約8万人が新たに腎臓がんに罹患しています。腎臓がんにはいくつかの形態があり、そのうち腎細胞癌(RCC:Renal cell carcinoma)は、最も発生頻度の高い腎臓がんの形態です。腎細胞癌(RCC)は放射線治療や化学療法への感受性が低いため、腫瘍の増大を阻止するために最も適した手法として外科手術(外科的切除術)が選択されます。腎臓がんの研究や解析のために、プロテインテックでは免疫組織化学(IHC)に使用可能な様々な一次抗体やすぐに使えるIHCキットを取り揃えています。これらの研究用製品は、腎臓組織サンプル中の重要なバイオマーカーの検出や探索に利用できます。
腎臓がん研究製品/マーカー抗体
PAX8
PAX(Paired box、ペアードボックス)遺伝子ファミリーは、組織や器官の発生で重要な転写因子群であり、その一部は腎臓の発生過程を制御し、成人腎臓組織中でも高く発現します。腎臓がんが進行し転移すると、転移部位のがん腫瘍からはPAX8が検出されるため、腫瘍の原発部位の特定に役立ちます。プロテインテックのPAX8抗体は、他社のPAX8抗体製品の論文引用実績を大きく上回る490報以上の論文に使用されています。
PAX8抗体(カタログ番号:10336-1-AP、希釈倍率1:5000)を使用した、パラフィン包埋ヒト腎細胞癌組織スライドの免疫組織化学染色(10X)。
CA9
CA9(Carbonic anhydrase 9、炭酸脱水酵素9)は、二酸化炭素と水が重炭酸と水素イオンに変換される可逆的反応を触媒する炭酸脱水酵素であり、細胞のpHレベルの維持に働く膜貫通タンパク質です。腎細胞癌ではCA9が過剰発現する傾向にあり、がん細胞にとって不利な微小環境でもCA9が過剰発現することでがん細胞の生存に寄与します。CA9は様々な腎細胞癌(RCC)サブタイプの中で、淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC:Clear cell renal cell carcinoma)において最も高いレベルでのIHC陽性反応が認められます。そのため、CA9抗体は淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)とその他の腎臓がんを判別するために使用されます。
CA9抗体(カタログ番号:11071-1-AP、希釈倍率1:50)を使用したパラフィン包埋ヒト腎細胞癌組織スライドの免疫組織化学染色(10X)。
NRF2
NRF2(Nuclear factor erythroid 2-related factor 2)は、活性酸素種(ROS:Reactive oxygen species)の中和と下流の強力な抗酸化反応を誘導する転写因子であり、細胞を酸化ストレスから保護します。また、NRF2はDNA修復、血管新生、化学療法抵抗性の獲得等の、酸化ストレス応答以外の細胞プロセスにも関与すると考えられています。抗がん剤の中には、投与すると活性酸素種(ROS)の産生を増加させ、がん細胞を死滅させる傾向にあるものが多く存在します。そのため、抗酸化因子を制御するNRF2発現レベルが高い状態はがん細胞の生存に有利に働きます。したがってNRF2の発現は、腎細胞癌の検出だけでなく、薬剤耐性の有用な指標にもなり得ます。プロテインテックのNRF2抗体は、他社のNRF2抗体製品の論文引用実績を大きく上回る1,400報以上の論文に使用されています。
NRF2(NFE2L2)抗体(カタログ番号:16396-1-AP、希釈倍率1:200)を使用したパラフィン包埋ヒト腎細胞癌組織スライドの免疫組織化学染色(10X)。
腎臓がん研究・解析用抗体/各種マーカー抗体
関連する機能 |
マーカー |
カタログ番号 |
血管新生 |
19003-1-AP |
|
細胞増殖 |
20960-1-AP |
|
18262-1-AP |
||
細胞の生存 |
11486-2-AP |
|
11071-1-AP |
||
16225-1-AP |
||
16396-1-AP |
||
10508-1-AP |
||
10037-1-Ig |
||
分化 |
18008-1-AP |
|
18696-1-AP |
||
17513-1-AP |
||
23614-1-AP |
||
転移 |
26056-1-AP |
|
10336-1-AP |
||
18150-1-AP |
||
10366-1-AP |
腎臓がん研究・解析用IHCキット
関連する機能 |
マーカー |
カタログ番号 |
血管新生 |
KHC0735 |
|
細胞増殖 |
KHC0190 |
|
細胞の生存 |
KHC0223 |
|
KHC0187 |
||
KHC0434 |
||
KHC0646 |
||
分化 |
KHC0386 |
|
KHC0204 |
||
KHC0544 |
||
転移 |
KHC0094 |
|
KHC0038 |
||
KHC0087 |
||
KHC0039 |
参考文献
- M L Barr, et al. PAX-8 expression in renal tumours and distant sites: a useful marker of primary and metastatic renal cell carcinoma? J Clin Pathol. 2015 Jan;68(1):12-7.
- N J Farber, et al. Renal cell carcinoma: the search for a reliable biomarker. Transl Cancer Res. 2017 Jun;6(3):620-632.
- L J Gudas, et al. The role of HIF1α in renal cell carcinoma tumorigenesis. J Mol Med (Berl). 2014 Aug;92(8):825-36.
- Kidney Cancer | CDC. (n.d.). https://www.cdc.gov/cancer/kidney/index.htm
- F Li, I A M Aljahdali, R Zhang, et al. Kidney cancer biomarkers and targets for therapeutics: survivin (BIRC5), XIAP, MCL-1, HIF1α, HIF2α, NRF2, MDM2, MDM4, p53, KRAS and AKT in renal cell carcinoma. J Exp Clin Cancer Res. 2021 Aug 12;40(1):254.