特集:卵巣がん研究・解析

プロテインテックは卵巣がんの研究や解析に有用な様々なマーカー抗体/関連抗体を数多く取り揃えています。


はじめに

卵巣がんは、女性のがんによる死亡原因の第5位を占めるがん種です。早期卵巣がんは初期症状がなく、がんが進行するまで診断されない場合も多く、しばしば「サイレントキラー」と称されます。卵巣がんには生殖細胞に由来する胚細胞腫瘍や顆粒膜細胞腫等の性索間質性腫瘍もありますが、卵巣がんのほとんどは上皮組織に由来する上皮性腫瘍です。その他の多くのがんと同様に、卵巣がん患者の長期生存には、転移に先駆けた早期診断が重要となります。プロテインテックは、研究者が卵巣がんの増悪や進行のメカニズムをより深く理解し、モデル化できるよう、近年解明が相次ぐ卵巣がんバイオマーカーをターゲットとする様々な抗体、ELISAキット、IHCキットを取り揃えています。

卵巣がんの種類と由来する組織部位を示した卵巣のイラスト

図. 卵巣がんの種類と由来する組織部位を示した卵巣の概要。

 

卵巣がん研究製品/マーカー抗体

P53

P53は、腫瘍抑制遺伝子として広く知られており、がんにおいて最も高い頻度で変異が認められます。p53変異の割合は卵巣がんにおいても極めて高いことが報告されており、ステージ分類の後期段階の卵巣がんでは約97%にp53の過剰発現が認められます。遺伝子変異が生じたp53は、腫瘍抑制の機能が無効化するだけではなく、細胞増殖や薬剤耐性を促進する遺伝子を活性化することで発がん遺伝子(Oncogene)として機能する可能性が示唆されています。また、変異が生じたp53遺伝子は、ユビキチン/プロテアソームによる分解を回避することができ、がん細胞内に蓄積することが報告されています。プロテインテックのp53抗体は、これまで850報以上の論文に使用されており、世界中の研究者から選ばれているp53抗体製品の1つです。

P53抗体を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍の免疫組織化学染色。

P53抗体(カタログ番号:21891-1-AP、希釈倍率1:100)を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍の免疫組織化学染色(10X)。

 

CA125/ MUC16

CA125(Carbohydrate antigen 125、糖鎖抗原125)は、MUC16(Mucin 16)としても知られる、卵巣がんの進行をモニタリングするために最も多用されるバイオマーカーの1つです。CA125は、女性の生殖組織の粘膜に潤滑性を付与し、粘膜を維持することで、感染性病原体等に対する保護バリアの形成に寄与するムチンのコアタンパク質です。CA125は通常、卵巣がん組織において過剰発現しています。CA125を過剰発現するがん組織は、腫瘍転移が生じやすいことが報告されており、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を介した免疫応答の阻害が促進すると考えられています。CA125は細胞表面に発現するタンパク質であることから、CAR-T細胞療法等のがん免疫療法のターゲットとしても研究されています。

MUC16(CA125)抗体を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍組織スライドの免疫組織化学染色。

MUC16(CA125)抗体(カタログ番号:20077-1-AP、希釈倍率1:200)を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍組織スライドの免疫組織化学染色(10X)。

 

HE4

HE4(Human epididymis protein 4)は、当初、男性の生殖系から発見されたタンパク質ですが、肺、腎臓、唾液腺、前立腺、乳房等のその他の組織でも発現していることがその後の解析で明らかになりました。HE4は、卵巣がんに対する特異度が先述のCA125よりも高いことが報告されている、新たに判明したバイオマーカーです。ただし、HE4とCA125を同時に測定した場合、どちらかのマーカーの単独測定時よりも高い特異度で卵巣がんの検出できることが示唆されています。HE4は上皮性卵巣がんの組織で強く発現しているため、上皮性腫瘍とその他の腫瘍の鑑別に使用できる可能性があります。また、良性腫瘍と悪性腫瘍(転移性腫瘍)の識別にも有用であることが示唆されています。

HE4抗体を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍組織スライドの免疫組織化学染色。

HE4抗体(カタログ番号:14406-1-AP、希釈倍率1:200)を使用したパラフィン包埋ヒト卵巣腫瘍組織スライドの免疫組織化学染色(10X)。

 

卵巣がん研究・解析用抗体/各種マーカー抗体

関連する機能

マーカー

カタログ番号

細胞増殖

HER2

18299-1-AP

K-Ras

12063-1-AP

p53

21891-1-AP

TFR1/CD71

10084-2-AP

WT1

12609-1-AP

VEGF

19003-1-AP

細胞の生存

BCL-2

12789-1-AP

HSP90

13171-1-AP

Osteopontin

22952-1-AP

YKL40

12036-1-AP

分化

KRT7/CK7/Cytokeratin 7

17513-1-AP

KRT20/CK20/Cytokeratin 20

17329-1-AP

HE4

14406-1-AP

KLK8/Kallikrein 8

14232-1-AP

転移

CA125/MUC16

20077-1-AP

CD138/Syndecan-1

10593-1-AP

IGFBP2

11065-3-AP

 

卵巣がん研究・解析用IHCキット

関連する機能

マーカー

カタログ番号

細胞増殖

P53

KHC0079

TFR1/CD71

KHC0496

VEGF

KHC0735

細胞の生存

BCL-2

KHC0012

HSP90

KHC0659

Osteopontin

KHC0782

分化

KRT7/CK7/Cytokeratin 7

KHC0204, KHC0748

KRT20/CK20/Cytokeratin 20

KHC0034

 

血中バイオマーカー測定用ELISAキット

多くの場合、卵巣がんは患者血清中の腫瘍マーカーとなる分泌タンパク質を検出することでがんの検査・スクリーニングが実施されます。がんの病期によっては、マーカータンパク質の中には濃度が極めて高くなるものがあり、予後を推定するマーカーとして使用される場合があります。プロテインテックのELISAキットは感度が高く、血清、血漿、細胞培養上清等の様々なサンプルによる検証が実施されています。

カタログ番号

マーカー

測定範囲

感度

KE00132

AFP

15.6-1000 pg/mL

0.1 pg/mL

KE00157

APOA1

0.47-30 ng/mL

0.03 ng/mL

KE00265

HE4

46.88-3000 pg/mL

2.8 pg/mL

KE00287

LDH/LDH-B

0.625-40 ng/mL

0.04 ng/mL

KE00233

Osteopontin

31.25-2000 pg/mL

1.85 pg/mL

KE00046

Transferrin

1.56-100 ng/mL

0.6 ng/mL

KE00216

VEGF

31.25-2000 pg/mL

1 pg/mL

 

 

参考文献