特集 : 神経関連疾患研究用抗体 - ALSとFTD
前頭側頭葉変性症(FTD)と筋萎縮性側索硬化症(ALS):2種類の神経変性疾患の短い物語。
はじめに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)などの神経変性疾患は、難治性の衰弱性疾患です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)
ALS(ルー・ゲーリッグ病とも呼ばれます)は、一般的な成人発症の神経疾患です。典型的な症状には、手足の脱力、動作を開始/制御する能力の喪失、および不明瞭な発話などがあります。この疾患は、脳および脊髄の運動ニューロン減少と、前頭葉と側頭葉の萎縮を特徴とします。
病原性変異の大部分は、TDP-43(TARDBP、TAR DNA-binding protein 43、TAR DNA結合タンパク質43)、FUS(fused in sarcoma; 図1)、ユビキリン2(UBQLN2、ubiquilin2; 図2)、SOD1(図3)、およびC9orf72の非コーディング領域に存在します。
図1. FUS/TLS抗体(カタログ番号:60160-1-Ig、希釈倍率:1:1000)を使用したパラフィン包埋ヒト神経膠腫組織スライドの免疫組織化学染色(10倍レンズ下)。Tris-EDTAバッファー(pH9)で加熱抗原賦活化を行った。
図2. ラット脳組織溶解物をSDS PAGEに付した後、UBQLN2抗体(カタログ番号:23449-1-AP、希釈倍率:1:800)と室温で1.5時間インキュベートしてウエスタンブロットを行った。
ウェスタンブロット関連製品
ローディングコントロール抗体
GAPDH 抗体 | |
カタログ番号: 60004-1-Ig | |
GAPDH酵素は、広い細胞種で高く発現するため、ウエスタンブロット実験におけるタンパク質ローディングコントロールとして頻繁に使用されます。GAPDHは、解糖、DNA修復、アポトーシス等、いくつかの細胞機能にも関わることが知られています。 プロテインテックのモノクローナルGAPDH抗体は、ヒト全長タンパク質に対して作製されており、これまでに2,670報以上の文献で使用されています。 |
Beta Actin 抗体 (KD/KO 検証済) | |
カタログ番号: 66009-1-Ig | |
ベータアクチンは、全ての真核細胞タイプにわたって広範で一貫した発現を示し、また、このタンパク質の発現レベルはほとんどの実験的処理に影響を受けないことから、通常、ローディングコントロールとして用いられる。 66009-1-Igは、これまでに1,135 報以上で使用されており、様々な動物種で使用できます。 |
プロテインテックのコントロール抗体は、お求めやすい価格 ¥36,000/150ul で提供しています。
図3. SOD1抗体(カタログ番号:10269-1-AP、希釈倍率:1:50)を使用したパラフィン包埋ヒト脳の免疫組織化学染色(10倍レンズ下)。
前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)
FTDは、進行性の神経細胞減少に起因する疾患です。症例の大部分で、前頭葉または側頭葉、あるいはその両方に脳萎縮が見られます。FTDは若年発症の認知症として知られており、認知、運動、および言語機能の低下を含む行動異常を特徴とします。
FTDで最もよく見られる変異は、TDP-43/ TARDBPタンパク質(図4)、TAU(図5)の病理、またはFUS(fused in sarcoma)遺伝子に関連しています。
FTDとALSにおけるC9ORF72
ALSとFTDは、同属のペクトル障害に属すると分類されており、C9orf72中のGGGGCCのヘキサヌクレオチド反復配列延長(HRE)は、これらの疾患の重要な遺伝子病因の1つです。Davidson Yらによる最近の研究において、プロテインテックのC9orf72抗体の高い特異性が確認され、研究および診断研究目的でのこれらの抗体の価値が大きいことが明らかにされました。
図4. TDP-43抗体(カタログ番号:10782-2-AP、希釈倍率:1:200)を使用したパラフィン包埋マウス脳組織スライドの免疫組織化学染色(10倍レンズ)。
図5. TAU抗体(カタログ番号:10274-1-AP、希釈倍率:1:50)とAlexa Fluor 488コンジュゲートAffiniPureヤギ抗ウサギIgG(H+L)を使用した(4% PFA)固定マウス脳組織の免疫蛍光染色。
関連製品
抗体名 | 抗体タイプ | アプリケーション |
文献数 |
TDP43 (C-Terminal) Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, chIP, ELISA | 94 |
TDP43 (Human Specific) Antibody | マウスモノクローナル | WB, IP, IHC, FC, CoIP, ELISA | 59 |
Recombinant TDP43 Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IHC, FC, ELISA | - |
FUS/TLS Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, FC, chIP, ELISA | 60 |
OPTN Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, FC, ELISA | 35 |
GFAP Antibody | マウスモノクローナル | WB, IP, IHC, ELISA | 33 |
PTEN Antibody | マウスモノクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 16 |
C9orf72 Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, ELISA | 14 |
VAPB Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, FC, ELISA | 13 |
Ataxin 2 Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, ELISA | 12 |
GR Repeat Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, Dot blot, ELISA | 12 |
GP Repeat Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 10 |
PR Repeat Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 9 |
P62/SQSTM1 Antibody | マウスモノクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IHC, IF, FC, ELISA | 8 |
Granulin Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, ELISA | 7 |
CHMP2B Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IHC, IF, ELISA | 6 |
Profilin 1 Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 6 |
VCP Antibody | ウサギポリクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IP, IHC, IF, CoIP, ELISA | 5 |
GA Repeat Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 5 |
AP Repeat Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 4 |
TMEM106B Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IP, IHC, IF, ELISA | 3 |
Angiogenin Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, ELISA | 1 |
P150 Glued Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | 1 |
VGLUT1 Antibody | ウサギポリクローナル | IHC, IF, FC, ELISA | 1 |
VCP Antibody | マウスモノクローナル, KD/KO 検証済み | WB, IHC, IF, ELISA | - |
ALS2 Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IP, IHC, IF, ELISA | - |
VGLUT2 Antibody | ウサギポリクローナル | WB, IHC, IF, ELISA | - |
最後に
シナプス可塑性の改善、酸化・炎症による損傷の抑制、または運動機能障害の回復によって神経を保護する特性を持つ新薬の開発が必要とされます。
信頼性の高いツールおよびケア戦略が開発できない限り、神経変性疾患の経済的影響および人的影響は、世界人口の高齢化が進むにつれて増大すると予想されます。
例えば、最近、ニューロンペントラキシン2(NPTX2)が、FTDの進行をモニタリングするための脳脊髄液中の信頼できるマーカーとして同定されています。NPTX2(抗体番号:10889‐1‐AP)は、NARP(ニューロン活性調節ペンタキシン)としても知られており、興奮性シナプス形成に関与する分泌タンパク質です。また、NPTX2は、確立されたシナプスにおけるα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)型グルタミン酸受容体のクラスター形成に役割を果たし、ドーパミン作動性神経細胞の非アポトーシス性細胞死をもたらします。